ブログトップ | ログイン

日日日影新聞 (nichi nichi hikage shinbun)

hikagesun.exblog.jp

カテゴリ:宋春庵( 3 )

建具の話 その2

建具の話 その2_c0195909_12430233.jpg



文京区立肥後細川庭園内に建つ

和風建築・松聲閣(しょうせいかく)で

定期的に開催されている

「文化と自然を楽しむ連続講座」の

9回目は建具職人・新井正さんによる講座でした。

テーマは「建具にみる木と日本人」


この講座に

新井さんが懐かしいものを持参しました。

それは2002年に竣工した

鎌倉山の茶室「宋春庵」で

再利用した障子の腰板でした。

宋春庵(そうしゅんあん)は、

およそ築100年の書院造を

草庵茶室に再編した建築です。

新井さんは宋春庵の建具工事を担当しました。

講座に持ってきていただいた障子の部材は

工事中に余った障子が

貴重な仕事をしているからと

ずっと保管してきたものでした。


写真は障子の腰板部分を写しています。

腰板には

縦の部材である舞良子がついており、

この板に吸い付けで固定されていました。

細い舞良子が薄い板に吸い付けで

固定されている仕事はとても美しく、

職人の技術と優れた道具がないと

到底作れるものではないと

新井さんは話しました。


建具の話 その2_c0195909_12425835.jpg



そしてさらにすごいことに、

縦框と下桟の仕口が

鬢面留め(びんづらどめ)になっており、

その仕事の精度は切れ味がよく、

見事な仕事をしていました。

新井さんはこの講座で

日本の素晴らしい木造建築を支えるものは

三つの言葉で表現できると話しました。


「良材である木」

「職人の感性」

「道具」であると・・・。


この障子の腰板の仕事を見てあらためて、

新井さんが言う三つの言葉に納得するのでした。



建具の話 その2_c0195909_12425309.jpg



建具の話 その2_c0195909_12424845.jpg



建具の話 その2_c0195909_12424480.jpg



建具の話 その2_c0195909_12423613.jpg



ここから

宋春庵について説明しようと思います。


宋春庵は藤沢市片瀬に建っていた

100年の書院造を

草庵茶室に「再編」した建築です。

もともと島津藩ゆかりの邸宅であった

書院造りを

建主の母が茶道の稽古場として

長年使ってきました。


ある時期、

相続の関係で書院造りが建つ土地を

売却することになってしまいました。

この書院造に対する

建主の母の愛着は相当強く、

継承できる方法を考えてほしいと

相談されました。

「日影さん、この家をなんとかしてよ・・・」と。


建主は鎌倉山にも住んでいました。

その鎌倉山の敷地のどこかに

部分的でもいいので

復元できないかと考えましたが、

斜面が多く(そのぶん緑も多く)、

適当な場所が見つかりませんでした。

考えぬいたあげく、

狙った場所は

玄関先の10坪ほどの平地でした。


藤沢市片瀬に建っていた時の配置図。

網かけした範囲が既存の書院造。


建具の話 その2_c0195909_12423172.jpg



藤沢市片瀬に建っていた時の平面図。


建具の話 その2_c0195909_12422757.jpg



藤沢市片瀬に建っていた時の天井伏図。


建具の話 その2_c0195909_12422300.jpg



僕は、

この書院造りを継承するには

部分移築などの

単純な方法では無理であると考えました。

既存の部材をできるだけ生かし、

僕の言葉で言う、

「空間の粒子」を凝縮し「再編」する手法・・・。

「空間的復元」をめざすことに決めました。


建主の母が

この書院造で茶道の稽古をしながら

記憶に残してきたもの(部材)たちは

なんだろうか・・・。

障子、天井板、柱、長押、

鴨居、廻り縁、屋根の垂木・・・。

これらをいったん解き(ほどき)、

草庵茶室に

再編する作業がはじまりました。

写真は、

正面の付書院と床柱などの床飾り


建具の話 その2_c0195909_12421887.jpg



腰付額入障子や欄間の障子


建具の話 その2_c0195909_12421437.jpg



床柱


建具の話 その2_c0195909_12420946.jpg



垂木と小舞と天井板で

構成される広縁の化粧天井


建具の話 その2_c0195909_12420545.jpg



書院の部材はすべて手作業で解体しました。


建具の話 その2_c0195909_12415866.jpg



鎌倉山の敷地に計画された草庵茶室


建具の話 その2_c0195909_12415257.jpg



建主の母の記憶の中で

もっとも重要だったと「推測」した僕は、

障子の景色を最大限生かすために、

障子に囲まれた空間をイメージしました。

障子を寸分狂いなく実測し、

柱間の寸法を確定していきました。

パズルのように絡み合う障子を、

すでに昔からこうであったかのように

自然に

普通に「再編」することが

宋春庵のテーマであったし、

宋春庵以外の設計でも

今までもこれからも

心がけていることの大切なテーマでした。


建具の話 その2_c0195909_12414884.jpg



以下の図面は

雑誌「住宅建築」に掲載された宋春庵の図面。

再編した部材や手法が詳細に説明しています。


建具の話 その2_c0195909_12414312.jpg



建具の話 その2_c0195909_12413715.jpg



建具の話 その2_c0195909_12413091.jpg



建具の話 その2_c0195909_12412600.jpg



建具の話 その2_c0195909_12411859.jpg



以下の写真は、

雑誌「住宅建築」に掲載された宋春庵の竣工写真。

撮影は建築写真家の畑亮さん。

住宅建築200310月号の記事です・・・・。


建具の話 その2_c0195909_12411212.jpg



建具の話 その2_c0195909_12410652.jpg



下地窓に掛けられた障子は欄間障子を再利用。

両脇の腰付障子の腰部分が

新井さんが講座に持ってくれたところ。

柱は金輪継ぎで継がれ、

差石の上の化粧土台は

長押を再利用しています。

材料は基本的に

日本栂を使用していました。


建具の話 その2_c0195909_12410195.jpg



建具の話 その2_c0195909_12405055.jpg



天井は鴨居上まで下げました。

床柱は既存のままだと太すぎるので

木割を調整するために細くしました。


建具の話 その2_c0195909_12404526.jpg



正面は付書院を復元し、

書院造の継承の象徴として位置づけ、

庭の緑を眺め楽しめるようにしました。

地袋の襖には、

建主の母が着なくなった着

物の布を張りました。


建具の話 その2_c0195909_12404052.jpg



建具職人・新井正さんが、

宋春庵の障子を

講座に持ってきてくれたことで、

17年前の仕事が僕の中で蘇ってきました。



建具の話 その2_c0195909_11265464.jpg



by y-hikage | 2020-02-07 13:00 | 宋春庵 | Comments(0)

建具の話 その1

建具の話 その1_c0195909_11213032.jpg



文京区に

区立肥後細川庭園という

清楚で美しい庭園があります。

その庭園の中に

松聲閣(しょうせいかく)という

和風建築が建っています。

その松聲閣で

「文化と自然を楽しむ連続講座」という

庭 カフェトークがおこなわれています。


企画とコーディネートは

知りあいの檜山綾香さん(at knot)。


この講座の第9回目(今年の118日)は、

建具職人である新井正さんだったので、

講座に参加しました。

新井正さんとのお付き合いはとても古く、

1998年頃に最初に出会いました。

日影アトリエ設計でも

今まで住宅10棟の

木製建具を製作していただいています。


最初に新井さんに製作していただいたのは、

「 宋春庵 」という茶室で

2002年のことでした・・・。


講座の参加費は3000円で

抹茶と季節の和菓子付きです。

この日のお菓子は、

松聲閣の松と

お正月の松をあわせて

松のお菓子が出されました。


建具の話 その1_c0195909_11193692.jpg



講座は以下の五つのテーマに分かれていました。

1.建具とは

2.組立体験

3.技法

4.建具と木と日本人

5. 松聲閣の2階見学

中でも2番目の障子の組立体験は、

20名の参加者全員が楽しんでいました。


建具の話 その1_c0195909_11193070.jpg



新井さんが前もって用意してくれた障子の部材。


建具の話 その1_c0195909_11192627.jpg



見よう見まねで障子を組み立てていく参加者


建具の話 その1_c0195909_11192125.jpg



組立指導しながら建具の仕口などを説明する新井さん


建具の話 その1_c0195909_11191629.jpg



手前が組立が完成した障子


新井さんは

格子を電卓などを使用しないで

(計算しないで)

格子を割り付ける方法を解説しています。


建具の話 その1_c0195909_11191108.jpg



ところでこの和風建築

「 松聲閣 」は大正14年(1925)に

建築されたとのことです。

大正12年(1923)の関東大震災によって

以前の建物が壊れて、

壊れた後に残った部材を再利用しながら

この場所に建築されたそうです。

建築時の棟札に

建築時期と建築主が書かれています。


建具の話 その1_c0195909_11190663.jpg



建具の話 その1_c0195909_11185369.jpg



2階から見る池泉回遊式庭園


建具の話 その1_c0195909_11184973.jpg



2階の和室から見る庭園


建具の話 その1_c0195909_11184518.jpg



1階の和室から見る庭園


建具の話 その1_c0195909_11183538.jpg



この日はみぞれまじりの冷たい雨でした。

春になり

花がさき

暖かくなったら

また来てみたいものです・・・。


建具の話 その1_c0195909_11265464.jpg


by y-hikage | 2020-02-02 11:31 | 宋春庵 | Comments(0)

鎌倉山の茶室「宋春庵」を訪ねました。

鎌倉山の茶室「宋春庵」を訪ねました。_c0195909_19262488.jpg
神奈川県鎌倉市の

鎌倉山に8年前に設計した

茶室「宋春庵」を久しぶりに訪ねました。

大切に使っていただいているせいか

建築当初からの変化はありませんでした。

ひんぱんに茶道の稽古をおこなっているとのこと。

「宋春庵」は

片瀬江ノ島に残っていた大きな書院造りの家を

一旦解体し三畳の茶室に圧縮したものです。

圧縮することで家の記憶が

小空間に凝縮されています。

以前の大きさとまるで違うこの茶室に

お母様が入られ

「前と全然変わらないわね」

というようなことを話されたと聞きました。

以前の空間の粒子が

移築再生後の空間に同じように漂っていることを、

「空間的復元」と僕は呼んでいます。



鎌倉山の茶室「宋春庵」を訪ねました。_c0195909_18430132.jpg

by y-hikage | 2009-10-29 19:38 | 宋春庵 | Comments(0)