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日日日影新聞 (nichi nichi hikage shinbun)

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2019年 05月 30日 ( 1 )

75.吉村順三記念ギャラリー「高輪の家」

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5月のとある週末、

吉村順三記念ギャラリーに行きました。

テーマは、

75回「 高輪の家 」


高輪の家は、

1974年に東京高輪に建てられた家です。

写真は北西に配置された居間

西側と南側を引き込み障子としています。

開口部の窓枠を設けずに、

壁を白く塗りまわし輪郭を消しています。

写真が白黒なのではっきりとわかりませんが、

全体的に壁面の角や端部に

木を使用せずに白い均質な空間を

求めているように見えました。


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吉村順三記念ギャラリーの展示室

道路沿いに塀を立て

竹を植えた庭がガラス越しに見えています。

この美しい自然光を眺めるのが好きでした。

机に置かれているのは、

展示テーマごとに刷られた図面集です。


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ギャラリーの応接室

おもえば最初に

このギャラリーを訪ねた時に

感じた応接室の気持ちのよさにとりつかれ、

12年間ぐらい毎回欠かさず、

ギャラリーに通い続けたように思います。


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応接室の開口部の詳細図

障子を引き込み

ロールスクリーンをおろすと

スライド映写機の

スクリーンにかわる仕掛けです。

外部の自然光が

スクリーンの両端から漏れないような

工夫がされています。

今回、展示されている高輪の家と同様に、

開口部の窓枠を白く塗りまわし

輪郭を消しています。


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竹橋のパレスサイドビルを設計した

日建設計・林昌二氏は、

この応接室のことを文章にしています。

この文章を読んだことが、

吉村順三記念ギャラリーに

興味をもったきっかけとなりました。

読んでみようと思います。


 ○  ○  ○  ○


隠し過ぎずに


目白の住宅地の一角にある吉村順三設計事務所の建物は、事務所の性格のままに、あまりにも何気ない印象ですから、よほど道順を確かめて訪れないと、行き過ぎてしまうほどです。

けれども一歩中に入ると、さすがに気分のよいつくりようで、全体の雰囲気がなんとはなしに伝わってくる程度に開放的でありながら、ワンルーム・オフィスのように互いに見え過ぎることはない、巧みなバランス感覚がみなぎった設計室を見ることができます。

といっても、来客が設計室に立ち入ることは滅多にないようで、入口脇にある、これもあまりに気分が良い部屋なので来客が長居するのではないかと懸念される応接室に通されます。

その気分の良さというのは、床を一段下げてソファをつくりつけたアットホームなスケール感と、外に向かって穿れたひとつの窓の効果によっています。

窓には紙障子があって、その枠が(ここでいう枠とは障子の框と組子を示す。注釈:日影良孝)ラワンで赤いステイン塗りであることを知れば、吉村流の神髄に触れた思いをするものですが、その窓の外には、1mほどの先を通る道路との境界に立つ塀が迫っていて、窓と塀の間の、ほんのわずかな隙間を利用した、可愛らしい小庭が目に入る仕組みになっています。

小庭には石燈籠や植込みが配されて、まさに日本の伝統的手法には違いないのですが、ソファに腰を落ちつけて改めて窓の外を眺めてみますと、塀越しに見える道の向こうの商店の看板が、隠し切れなかったという思いを残すことなく、まことに自然に目に入ってしまいます。

吉村順三以外の、日本建築の名手を思い浮かべてみると、彼らなら完璧に視線を防いだに違いないと思われ、ここにも吉村流のこだわりのなさがあることを知ります。

日本の建築と住み手との間の関係では、見苦しいものはことさらに隠すのではなく、見えにくくする工夫があればそれで良く、あとは住み手の側の心づかいとして、見るべきでないものは見ない、聞くべきでないものは聞かぬふりをするのがルールなのでした。

そうでなければ「夏を旨とする」風通しは滅法良いが視線は遮ききれず、音はつつ抜けという家で気持良く暮らすこてはできなかったはずです。

暮らしの工夫は生活の作法となり建築の様式へとつながって、独特の味わいを醸し出します。

・・・・後略・・・・


(別冊新建築・日本現代建築家シリーズ7・吉村順三より引用)


 ○  ○  ○  ○


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by y-hikage | 2019-05-30 10:44 | 吉村順三ギャラリー | Comments(0)