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日日日影新聞 (nichi nichi hikage shinbun)

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2018年 09月 02日 ( 1 )

谷口吉郎の建築(東京工業大学の建築・その3)

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手元にある谷口吉郎作品集の序文に

村野藤吾はこう書いています。


※※※


「線に詩趣あり」


私は今、この稿を結ぶに当たり、私は図板の上にあった製図紙に、やわらかい鉛筆で一本の線を引いてみた。すると、紙背を透して幾本もの線が見てきた。

最初の一本は磨かれたステンレスの細い線である。光に渋さがあり知性が漂っていると思った。


次は、清らかな、しかし、底光りのする柔らかい線である。よく見ればピンと張った絹糸であった。

その次は、みやびだが、それでいて風流でもない早春の梅林が見えてきた。線と思ったのは一条の光芒であった。

最後に見えたのは、名工の作でもあろうか、細くて慎ましやかなタテシゲの美しい木格子であった。まぎれもなく谷口先生の映像のように思った。


(昭和5619日)

(谷口吉郎作品集・淡交社刊より)


※※※


東京工業大学のキャンパスを

正門から歩いていくと、

右手に柔らかい曲線の屋根が乗る

水平の庇が見えてきます。

路面からみると

平屋のこの建物の正面は

寸分の破たんもない面と線で構成されています。

谷口吉郎設計の

東京工業大学創立70周年記念講堂です。


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毎回、この建築の前を通るたびに

正面玄関の扉を開けて

中に入ろうとしてきましたが、

常に施錠してあり入ることができませんでした。

写真では知っていても、

実際に空間体験してみなければならない建築だと

理解していたので悔しい思いをしてきました。

しかし今回の見学で

偶然、内部に入ることができました。


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講堂の側面は斜めの芝生広場になっています。

正面から左手に回り込むと、

正面の静寂が一転して

縦の線の規則的なリズムに変わります。

その規則的なリズムが

後半にさしかかると

レンガ色の穴開きブロックとなり、

講堂の内部の光を予感させてくれます。


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初めて入った講堂のホール。

なんとも言えない柔らかい曲線の天井と

凛とした壁。

この対比が見事でした。

幸い学生さんたちが

音楽の練習をしていました。

とてもいい音に思えました。

いつも不思議に思います。

高度な音響設計による

現代の音楽ホールの音がおおむね悪く、

音響技術がそれほど高度でなかった

昔の音楽ホールの音ほうがなぜいいのか・・・と。


このホールでひとつ驚いたのは、

ステージ背面の壁が

屏風のように曲げっていて、

その材料が

コンクリートブロックだったことです。

コストを踏まえた

選択だったのかもしれませんが、

木の空間と美しく調和していました。


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南に面する壁は、

ホテルオークラの

「麻の葉紋の木組格子」に似た?

木組格子としています。

この格子から降り注ぐ光を期待したのですが、

あいにくカーテンが閉じていて

その豊かな光を

体験することができませんでした。


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カーテンを開けた状態の木組格子の壁。


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木組格子の詳細。

木の格子に白く塗装しています。


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ホテルオークラの「麻の葉紋の木組格子」


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音響を考慮した壁の詳細。


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ステージ背面の


コンクリートブロック屏風壁を

裏側から見たところ。



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階段。



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正面玄関内部。


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タテシゲガラスから

美しい光がはいるホワイエ。


建築家・村野藤吾が

谷口吉郎の建築を

「 線に詩趣あり 」と

表現した感性はみごとです・・・。




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by y-hikage | 2018-09-02 11:36 | 建築巡礼 | Comments(0)