
7月25日の水曜日、
新橋の「ギャラリーてん」で開催されていた
「手の記憶・遠藤勝勧・建築実測スケッチ展」
に行きました。

遠藤勝勧氏は、
1934年に生まれ
1955年に世界的建築家・菊竹清訓の
建築設計事務所に入所し
およそ40年間勤め
数百にものぼる菊竹清訓の作品を
担当された方です。

展覧会には、
遠藤勝勧著「見る測る建築」を持参しました。
ギャラリーの椅子に座っておられた遠藤勝勧氏に
この本を見せたら、
「良くもっておられましたね・・
この本はなかなか手に入らないそうですよ」
と言われました。
※
ギャラリーに展示されている
スケッチのほとんどは、
1965年にアメリカに渡ったときの
建築スケッチです。
ルイス・カーンをはじめとして
著名な建築物の詳細が
フリーハンドで描かれていました。
そのスケッチの精度と美しさは
眼を見張るばかりで、
本で見る印象とは別格のものでした。
当然建築から建築へと
移動しながら描いているはずですが、
一枚のスケッチに
どれぐらいの時間をかけられているか
聞いてみたら
「 10分 」というこれまた
驚くべきスピードに腰をぬかしました。
(当時、使用していたペンはロットリング・・・)
そしてまたこれらのスケッチは
フリーハンドで描いていながら
製図で使用する
三角スケールの縮尺に適合しています。
遠藤勝勧氏の建築の説明も
たいへん勉強になりました。
たとえばフランクロイドライトが
設計したグッケンハイム美術館について・・・。

グッケンハイム美術館は、
らせん状のスロープを登りながら
作品を鑑賞していく平面としていますが、
壁面は構造を兼ねた界壁で仕切られており、
この界壁で区切られた空間を、
遠藤氏は、
日本の茶室空間だと説明してくれました。
絵を飾る壁面を床の間に見立て、
床の間の壁面に注ぐトップライトの光は、
茶室の天井に設けられた
突き上げ窓から
ヒントを得ているのではないかと・・・。
トップライトの光が
床の間と床の間で切れないように
界壁に半円で穴を開けているのも
空間の流動性を保つためではないかと・・・。
界壁と手すりの間の通路の床に
緩やかな勾配をつけ
鑑賞する人たちによどみを与え、
このよどみの上の天井も勾配天井としており、
さながら茶室の掛込天井のようだと・・・。
こんな風に遠藤氏は説明してくれました
(僕の記憶のテープ起こしにて・・・)。
そしてこうも付け加えました。
「 自分の眼で見て実測してみないと、
ここまで気がつかないんだよね 」

遠藤氏が言う
グッケンハイム美術館の床の間を
製図室に戻って確かめてみました。

遠藤氏がみつけた
グッケンハイム美術館の床の間。
赤い線でなぞりました。
さらに断面図を見て確認。
界壁の半円の穴まで青く塗ったのは、
コンセプトを強調するためです・・・。

僕は今まで
グッケンハイム美術館の外観の写真を見て、
かたつむりのように見える隙間は、
日本の駐車場ビルのような
横長の窓だと思っていました。
ところが床の間を照らす
トップライトだったとは・・・。
遠藤勝勧氏の説明を聞くまでは
わかっていませんでした。
(※グッケンハイム美術館の写真と断面図は、
WRIGHT IL MUSEO GUGGENHEM からの転用)


遠藤勝勧氏が毎年使っている
手のひらサイズの手帳・・・。
この手帳もまた驚異的で、
小さい字で、
小さなスケッチでびっしりと
美しく描かれています。
この手帳を見返すと
過去のことが全てわかるとのことです。

遠藤勝勧著「 見る測る建築 」の
表紙の帯に書かれた
建築家・菊竹清訓氏の言葉。

遠藤勝勧著「 見る測る建築 」の
表紙の帯に書かれた
建築家・香山壽夫氏の言葉。

「 見る測る建築 」にサインをいただきました。

帰り際に遠藤勝勧氏と
記念写真を撮ってもらうことができました。