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日日日影新聞 (nichi nichi hikage shinbun)

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会津の家の木の魅力

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会津の家の初期のスケッチ



会津の家の設計をはじめた時に


建主さんから頂いたメモを読んでみます。


◇◇◇


私の実家や祖父母の家など、


会津地方の家は、


冬が寒くて切ない気持ちになります。


床が冷たい、窓が寒い、水まわりが寒い。


そのため、冬でも暖かく快適に


健康に過ごせる家が欲しいと切望しています。


また、美しいもの日々見て暮らすことの意義を


痛感するこの頃です。


美しいものが、


身近にひとつでもあってほしいと思っています。


経年美化で艶が上がる材料、美しい寸法、


なんとも言えない雰囲気。


そういう家に私は家族と暮らしてみたいです。


あわせて、会津という土地で、


会津産の材料を積極的に使用しながら、


この地域に根差した、


この土地ならではの家とは、


どんな形が良いのか模索していきたいと考えています。


会津は戊申の役により歴史的な建築物の多くが


焼失してしまったこともあり、


地域の芯(お手本)になるような建物が


少ないと考えています。


そのため自分たちの家族が、


現代における会津らしい家を模索することで、


家族の幸せはもちろん、


これから家を建てる人や地域に


良い影響になればと考えています。



会津産の材料で代表的な樹は会津桐です。


会津桐は高級材として知られています。


この会津桐を


玄関などのおもてなしの空間の内装材として


活用したいと考えています。


また会津産スギも


主要構造材として使用したいと考えています。


会津産スギは雰囲気が強く、


同じ会津地区においても


産地によって表情が様々です。


会津産スギの産地は、


主に三島町、金山町、会津美里町ですが、


他県産地との雰囲気の違いを


比較しながら使い分けを検討してみたいと思います。


◇◇◇


建主さんから頂いたメモを読みながら描いた


初期のスケッチが


ほぼ最終的な家の原型となりました。


会津は多雪地域であるため


シンプルな切妻屋根の総2階建てとしました。


間取りは日本の民家の間取りと同じく、


田の字型の架構とし、


玄関・廊下を民家の土間に見立てました。


シンプルな軸線の構成は明解な空間を生み出し、


構造的にも安定した架構を生み出します。


また家の断熱性能を高めるために、


㈱マツナガの麻入りセルローズファイバー


MSグリーンファイバー」を断熱材としました。


このMSグリーンファイバーを


屋根面を200㎜厚、


壁面を100㎜厚、


1階床下の90㎜吹込み充填しました。


さらに断熱性能を高める大切な外部の開口部は、


エクセルシャノンの


樹脂製「トリプルシャノン」を採用しています。


◇◇◇


材料の選定は、建主さんがおこないました。


ここでも建主さんの木へのこだわりを紹介してみます。


『構造材』


●土台は、会津地方では


クリが使用されてきましたが、


クリ材の高騰等による入手困難なことと


短い材料を継ぐ等の架構が困難であることから、


会津と縁がある下北半島(斗南藩:戊辰)の


青森ヒバを使用しました。


会津産材はトビや、黒芯、節が多いこともあり、


現在会津の製材所では、


構造材生産から撤退してしまっている状況で、


特に柱材としては、


特徴を活かす活用が難しいと考えました。


一方、一部には高樹齢木や大径材の資源があるため、


特殊材となる太い梁等の横架材には


まだ可能性があると思いました。


そのため柱は、


雰囲気の強い会津産スギの横架材を


包み込むような材を検討した結果、


柔らかい雰囲気である吉野スギを


使用することにしました。


通常柱は120㎜×120㎜の


断面寸法を使用しますが、


柱のチリを深くしたいことと、


内部空間の構造を


軽やかに美しく調和させたいことから


見付け35分の


105㎜×135㎜の断面寸法としています。


●梁や胴差等の横架材は、


伐採・手配した三島町産の125年生の


高齢樹の会津産スギを使用しました。


この高齢樹会津産スギの赤身は


鉄のように堅くて重い材料です。


1階天井に掛かる床梁は


会津美里産の役物(100年超)を使用しました。


●登梁は、6mを超えることから


入手可能であり品質の良い


栃木県産(那須塩原)の


90年生のスギを使用しました。


『内装材』


●床板は、


主に会津桐を使用しています。


その他にチャンチン、青森ヒバ、


吉野スギ、美杉スギを使用しています。


●壁板は、


会津桐、青森ヒバ、美杉スギを使い分けています。


●天井板は、


会津桐、青森ヒバ、会津産スギ(金山町)、


会津産スギ(三島町)、


栃木県産スギを使い分けています。


『その他内装材』


●階段、敷居には、


南会津産のヒメコマツを選びました。


南会津地域に自生する5葉松であるヒメコマツは、


肌色の柔らかい色合いと


モチモチしたさわり心地が特徴です。


建具材に重宝されてきましたが、


近年資源がなく活用されにくくなっているものの、


県内では南会津地域のみにある


特徴的な材料であるため、


階段等に使用しました。


玄関の建具は、会津産スギ(金山町)です。


金山町玉梨地区のスギは、


かつては会津一のブランド材として流通し、


流通過程で秋田スギ等の


銘木に名前が変わることで有名でした。


特別な苗木を使用した高樹齢木で、


冬目が細く、美しく優しい赤身が特徴のため、


天然秋田スギにも似た雰囲気を持っています。


玄関の建具は、


金山町玉梨地区の大山主で木材商でもある


須佐文伍さんより倉庫に大切に保管していた


四方柾の柱材を頂き、


後藤建具の後藤さんが割って製作してもらいました。


障子の框は吉野杉、組子はホウの木を選びました。


●その他、会津の魅力を伝えるために、


居間の襖紙を出ヶ原和紙、


コンセントプレートを会津桐、


キッチンを会津産ケンポナシと


チャンチンを使用しました。



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居間食堂。


柱は吉野スギ、大黒柱と小黒柱は吉野ヒノキ、


床梁と胴差は、


会津産スギ(会津美里町)と会津産スギ(三島町)、


床板は、


チャンチン30㎜厚(茨城県産)、


腰壁は会津桐、


天井は会津産スギ(三島町)としています。


障子の下上桟・框は吉野スギ、組子は


会津産ホウを使用しています。




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床梁(120×240)は,


会津美里産の樹齢100年超のスギ。


会津美里町は


比較的高樹齢のスギが現存する地域です。


吉野スギの柱は、


なるべく空間を軽やかにするためと


壁チリを深くするため


見付105×135の柱としています。



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登梁は、


栃木県産(那須塩原市)のスギとしています。


材寸150×270×6mの長尺のスギ。


構造設計は、山辺構造設計事務所。



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居間食堂。


右手前のキッチンカウンターの腰壁は会津桐。


手前の食堂の床はチャンチン。


チャンチンは雷電木とも言われ


縁起の良い木とされています。




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居間は座卓の生活のため、


琉球縁なし畳としました。


床材(チャンチン)と畳を区切る


框の材料は青森ヒバです。


本州最北端の製材所である島木材工業より、


下北産天然青森ヒバを提供いただきました。




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玄関と廊下を仕切る格子戸。


格子戸の材料は会津産スギ(金山町)としています。




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玄関天井の化粧垂木は、


玄関ポーチの庇の化粧垂木が連続するように


細かい間隔としています。


この意匠は会津若松市内に残る


蒲生秀行の廟(慶長17年・1612)を


イメージしています。




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吉野ヒノキの大黒柱と小黒柱。


この通りが切妻屋根の棟の筋となります。


家の構造の要となります。




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居間食堂。


全体の構造がそのまま内部空間に現れています。


素直でのびやかな空間をめざしました。




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廊下から居間・食堂を見ます。


手前右にコンセントプレートは会津桐。


壁も同様に会津桐。




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廊下から格子戸越しに居間食堂を見ます。




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大黒柱と小黒柱の奥に見える和紙張りの襖。


襖紙は西会津町出ヶ原和紙(寒ざらし姫楮)を


建主ご家族が製作したものです。


楮の原種である姫楮を使用しています。


姫楮は繊維が細かく光沢があり、


和紙にした場合、より繊細な表情となります。


西会津町在住の和紙造形作家・瀧澤徹也氏と


和紙の技術継承を図る


西会津地域の方々で製作しています。




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神棚(吉野ヒノキ)。


神棚のデザインと製作は、


棟梁の目黒利幸(めぐろ大工)さんによるもの。




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キッチンカウンターまわり。


柱は吉野スギ、


床梁は会津産スギ(会津美里町)、


床はチャンチン、


腰壁は会津桐、


天井は会津産スギ(三島町)。




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玄関格子戸は会津産スギ(金山町)を使用しています。


玄関土間床は、タタキ風のウルトラソイル仕上。


上り框は、ヒノキ。


廊下の床は会津桐としています。




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玄関壁は会津桐・柾目・共木のタテ張り。


2m超の会津桐の共木は非常に珍しく、


玄関の一番の見せどころです。


スッキリと柾板にしています。


スイッチプレートも会津桐。




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1階廊下の床は柾目の会津桐としています。




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1階廊下。


四つ間取りの民家の土間空間をイメージし、


階段を設けることで


2階と空間が連続するように考えました。


また、階段段板を蹴込板無しとすることで、


明るく開放的な空間としました。




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2階への階段。


親柱は吉野ヒノキ、


段板はヒメコマツ(南会津産)。


ヒメコマツは肌色が美しく、


モチモチした触感のあるマツです。




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階段・段板のヒメコマツの表情。




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子供部屋と客間。


吉野スギ(源平)の床と畳が連続します。




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子供部屋2


柱は吉野スギ、


床は吉野スギ、


天井は会津産スギ。


柱の吉野スギと


天井の会津産スギを組合せてみました。




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客間。


会津桐の天井。


天井板は45㎝角の碁盤張りとしています。




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寝室。


柱は吉野スギ、


床・腰壁共に会津桐、


天井も会津桐。


桐箱のような部屋となりました。


睡眠時間を考えて一番長く居る部屋を


最高の材料で包んでみました。




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寝室。


客間と同様に会津桐の天井板を


45㎝角の碁盤張りとしています。




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子供室1


柱は吉野スギ、


小屋梁は会津産スギ(三島町)、


床は三重県美杉産スギ、


天井は会津産スギ(金山町)。


三重県産のスギと会津産のスギの組合せ。




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2階廊下。


柱は吉野スギ、


小屋梁は会津産スギ(三島町)、


床は会津桐、


天井は会津産スギ(金山町)。



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2階サンルーム。


柱は吉野スギ、


小屋梁は会津産スギ(三島町)、


床は三重県美杉産スギ、


天井は会津産スギ(金山町)。




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2階廊下。


柱は吉野スギ、


小屋梁は会津産スギ(三島町)、


床は会津桐、


天井は会津産スギ(金山町)。




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1階引戸。


下上桟は吉野スギ、


鏡板は会津産スギ(金山町)。


ガラスは、


解体された建主さんの祖父母の家で


使用されていた古ガラス。


継続性を意識して再利用しました。




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1階引戸。


下上桟は吉野スギ、


鏡板は会津産スギ(金山町)。




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キッチンの材料は会津産のケンポナシです。


キッチンの棚板、引き出しは会津桐を使用しています。


床と吊り戸棚の框はチャンチンです。




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キッチンのテーマカラーは「オレンジ」


このテーマによって


チャンチンとケンポナシを選びました。




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チャンチン(茨城県産)とケンポナシ(会津産)を


使用したキッチン。


チャンチンは赤色が美しい材です。


割れやすい木ですが家具材と使用されます。


ケンポナシオレンジ色の美しい材です。


雷電木やテンプクナシとも言われ、


縁起の良い木です。


比較的会津に多く、


かつてはケヤキの代用品と利用され、


現在は雑木として


パルプチップ等に使用されています。


建築材として価値を見直してほしい材です。




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吊戸棚の開き戸の框はチャンチン(茨城県産)、


鏡板はケンポナシ(会津産)。




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小屋裏。


柱は青森ヒバ、


棟木は会津産スギ(三島町)、


登梁は栃木県産(那須塩原市)で6m材。


小屋束と床は青森ヒバ。


小屋裏がヒバの香りで充満しています。




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シンプルな切妻屋根の総2階建。


雪深い会津地方で


構造的にも風雪にも


耐えられるような家のかたちとしました。


玄関ポーチの庇は、


蒲生秀行廟(会津若松市)を


イメージした軒裏の意匠としています。



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◇◇◇


2023年の秋に会津の家が完成し、


住みはじめて2年近くたち、


生活しながら家から感じたことを


建主さんからお手紙をいただきました。


そのまま読んでみたいと思います。


◇◇◇


高齢樹の木や特徴ある産地の材料を、


柾目や板目、節の有無、樹種にこだわって


利用したことで、とても満足感があります。


また合板をほぼ使用しなかったため


木の良い香りがします。


会津桐の床は、冬でも裸足でも冷たくないので、


洗面脱衣室や寝室、廊下など


家の中でストレスがありません。


子どもたちの寝室はスギで冬は冷たいので、


子どもたちから桐にしてほしかったと


苦情がありました。


1階居間のチャンチンやヒバ、


暖房器具を使用していることもありますが、


2階の子供室のスギよりも冷たくない印象です。


スギの床は春から秋にかけて気持ちいいです。


ヒメコマツは家の中で


冬に最も冷たくなる材ですが、


10月頃までは、モチモチつやつやで、


夏は一番ひんやりするので最高です。


昨年春にエアコンを導入してから、


材の収縮が強くなりました。


床材のスギで1mm


チャンチンで13㎜程度の


隙間があいているところもあります。


建具に柱と同じ吉野スギを使用したので、


統一感が増した気がします。


木材だけではなく、襖紙の和紙を、


繊維が細かく光沢のある原種の姫楮で


自作したことで、


会津の魅力をより家に詰め込むことができました。


この和紙を神棚と同じ面に使ったことも


より効果的だと思っています。


ガラスも取り壊した家の古ガラスを再利用したので


雰囲気のいい光を楽しんでいます。


屋根裏にはヒバの香りが充満し、


2階までヒバの香りが漂っています。


屋根裏は、現在内装を整えていますが、


子どもたちと夕飯前に


懸垂トレーニングをして体を鍛えています。


スギの特徴を把握し、


産地を選んだり、


板目・柾目や赤み源平等の


表現を組み合わせることで、


スギだけでも


多様な表現ができる可能性を感じています。




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引っ越してしばらくしてから完成した玄関の下駄箱。


玄関の下駄箱は、


全て南会津産ヒメコマツで製作しています。



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小屋裏で遊ぶ子どもたち・・・(笑)





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1階平面図


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2階平面図


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小屋裏平面図


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1階天井伏図


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2階天井伏図


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梁間方向断面図


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梁間方向断面図


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桁行・梁間方向断面図


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桁行方向断面図


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1階床伏図


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2階床伏図


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小屋伏図


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棟木・母屋・登り梁伏図


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梁間方向軸組図


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桁行・梁方向軸組図


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桁行方向軸組図



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by y-hikage | 2025-09-29 16:10 | 会津の家 | Comments(0)
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