
長谷子ども会館(旧諸戸邸)は、
1908年(明治41年)に
横浜戸塚出身の株式仲介人の
福島浪蔵の別邸として建築されました。
敷地は2920坪にもおよび、
現在の洋館部の北東部に和風棟をも建てられ、
広大な敷地に庭園が設けられていたとされています。
これらの建物は、1921年(大正10年)に、
桑名の山林王である諸戸清六に所有が移ります。
関東大震災にも建物は健在で、
諸戸別邸は震災時の救療所本部として
用いられたといわれています。
しかし1976年(昭和51年)頃から使われなくなり、
広大な敷地は23の宅地に姿を変えました。
1980年(昭和55年)、
鎌倉市が長谷子ども会館にするために
補修工事を始めた時には、
和風棟はほとんど姿を消していたといわれています。
この和風棟の写真や図面が残っていないかどうか
鎌倉市に何度か問い合わせてみましたが、
そのような資料は見つからないとのことでした。
極めて華麗な造形意匠をもつ
洋館部が接続する和風棟は、
どんなにか素晴らしい和風建築であったのか
興味がつきません・・・。

旧諸戸邸(長谷子ども会館)は、
木造2階建、洋風トラス小屋組、
外壁は砂漆喰塗(一部南京下見張り)、
屋根は天然スレート鱗型葺(一部桟瓦葺)です。
バルコニーが前面に張り出した姿が特徴的で、
ギリシャ建築の様式を取り入れ、
柱や梁にはその形式に沿って
メダリオン飾りが付けられています。


1階の柱は「ドリス式オーダー」、
2階の柱は「イオニア式オーダー」
が用いられています

1階のドリス式オーダーの柱頭付近と、
アーキトレーヴの中央と左右には
「メダリオン飾り」が付けられ、
フリーズには「パテーラ(盃)」が付けられています。

2階には、イオニア式の柱頭、
フリーズのアールをもつ隅部分には
「パルメット模様」の装飾、
そしてコーニス下端の持ち送りなど、
大変デコラティブな雰囲気が醸し出されています。


メダリオン飾り

2階バルコニー屋根の軒蛇腹(コーニス)の下に
設けられた帯状面の隅部。
そのアール部には、
棕櫚(しゅろ)の葉をモチーフにした
パルメット文様が装飾されています。

ドア枠の華麗な装飾




窓枠の華麗な装飾

立面図に着色してみました。
色鮮やかの外観です。
この外観に対して
和風棟はどのような意匠をしていたのか
とても気になります。

ラフ模型を製作してみました。



ギリシャ神殿のオーダー
なぜ1階をドリス式オーダーとし、
2階をイオニア式オーダーにしたのか
知りたいのですが、
設計・施工に携わった人については
不明なので知る由もありません。

パルメット文様
「椰子(やし)」という意味のラテン語に由来します。
古代エジプトに単を発し、
ギリシャで広く用いられた模様パターン。
椰子の葉を図案化し、
下端を曲線でつないでいく図案。
古代ギリシャでは
しばしば「ロータス」と交互に用いられました。


旧諸戸邸・配置図

旧諸戸邸・1階平面図

旧諸戸邸・1階平面図

旧諸戸邸・2階平面図

旧諸戸邸・正面図

旧諸戸邸・側面図

旧諸戸邸・断面図
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