建長寺法堂

関東一の規模を誇る建長寺法堂

建長寺境内配置図

近世前期から復興された主要建物は現存し、

山門・仏殿・法堂の大屋根が

一直線上に配される様子は、

さながらかつての威光を示し、

堂々たる禅宗伽藍を今に伝えています。

総門から順番に

1・総門

2・山門

3・仏殿

4・法堂（赤色で塗った堂）

5・唐門

6・方丈

7・鐘楼

8・嵩山門（すうざんもん）

9・西来庵（せいらいあん）唐門

10・西来庵昭堂

11・西来庵開山堂

法堂（はっとう）は、住職が修行者（荘衆）に

説法をする場のことで尊像を安置しません。

法座（ほうざ）といって

住職があがって説法をする場所だけが

つくってあります。これが法堂の本来の姿です。

写真左手奥が仏殿

建長寺法堂は、仏殿の後ろに位置しています。

1802年（享和2年）に法堂再建が計画され、

1811年（文化8年）に

仏殿を前方に18間曳家し、

1814年（文化14年）に

中世の法堂の位置に再建されました。

法堂は仏殿と同じ、方三間裳階付ですが、

柱間が大きく、柱も太い大堂で、

上層二手先・裳階三斗も木柄が大きいです。

内部は敷瓦の土間床で

後部に本格的な禅宗様法座を設け、

柱が高いため上部が井戸状になるのを避けて

斗栱と天井の位置を工夫し、

広間の内部を形成しています。

また屋根は瓦葺でしたが、

1837年（天保8年）に

茅葺に変更する勧進が行われ、

茅葺に改めました。

のちに昭和に入り、屋根は銅板葺に変更されました。

全体的に装飾が少なく、

肘木に渦巻模様と支輪（しりん）とよぶ

軒板に流水紋をほどこす程度です。

側面の花頭窓を裾の広がりのない

関東風の意匠にするなど、

建物を古風に見せる工夫が凝らされています。

関東では最も大きな堂です。

禅宗様建築の特徴である

「下層平行垂木・上層扇垂木」ではなく、

「下層平行垂木・上層平行垂木」としています。

建長寺仏殿平面図

◇

以下の図面は、2002年（平成14年）

「建長寺法堂保存修理工事報告書」からのものです。

この保存修理の構造設計を

日影アトリエが毎回、構造設計をお願いしている

山辺構造設計事務所が担当しています。

建長寺法堂天井伏図

建長寺法堂正面図

建長寺法堂側面図（南面）

建長寺法堂側面図（北面）

建長寺法堂背面図

建長寺法堂桁行断面図

建長寺法堂梁間断面図

建長寺法堂詳細図

建長寺仏殿

◇

建長寺仏殿は、

芝増上寺の徳川秀忠夫人・

崇源院（すうげんいん）の

霊屋（れいおく）として

1647年（正保4年）に造営されたものです。

この霊屋の造り替えが計画され、

建長寺が1647年（正保4年）に

仏殿兼法堂としてゆずりうけ移築したものです。

禅宗様三間裳階付仏堂です。

もとは徳川秀忠夫人の霊廟であったことから

日光東照宮のような

金具や極彩色で装飾されていたといわれています。

しかし派手な装飾は移築時に、

禅寺にふさわしいように

簡素に造り替えたとのことです。

それでも堂内の欄間には、

天女や鳳凰、牡丹などの彫刻が残っています。

格天井には区画ごとに鳥を描き、

金箔が光っています。

濡れ縁のついていた痕跡も残っています。

移築時に床と縁を撤去して

敷瓦の土間床に改造し、

飛貫下に内法貫を加え、

腰貫位置を変更しました。

関東大震災時には完全に倒壊しましたが、

その後復旧され、

軸部には漆塗りのあとが、

また全体に極彩色の痕跡が残り、

往時の絢爛豪華なさまが偲ばれます。

仏殿とともに、

西来庵入口と

境内奥の本堂前に二棟の唐門が移築されており、

唐門は仏殿同様極彩色で、

華やかな装飾金具をちりばめています。

これらは江戸初期の霊廟建築の

数少ない遺構として貴重であり、

また建長寺と幕府の強いつながりを示す建物です。

建長寺総門

◇

現在の建長寺総門は、

京都に1783年（天明3年）に建立されたのち、

1940年（昭和15年）、

京都選仏寺の尽力によって移築されたものです。

今出川般舟三昧院

（いまでがわはんじゅさんまいいん）の

見事な表門です。

この江戸時代の四脚門は、

禅宗様と異なり、

親柱は、粽柱（ちまきはしら）ではなく、

上から下まで太さが変わらぬ和様の円柱です。

柱は唐居敷（からいじき）と呼ばれる

板の上にのっています。

これと4本の控柱が

和様特有の長押で連結しています。

長押と柱が重なる箇所には、

六葉（ろくよう）の釘隠がついていますが、

これも和様特有の化粧金具です。

また控柱を繋ぐ虹梁の上には、蟇股がのり、

中に菊と若葉の彫刻が施されています。

屋根の妻や上部にも様々な飾りが見られますが、

京都らしくあか抜けた淡泊な印象を与えています。