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「鎌倉とは・・・」を最近ずっと考えています。
禅宗寺院も鎌倉であるし、
明治以降の洋風建築も
鎌倉であることは確かです。
でももっと根本的に
鎌倉をあらわすものは何かと
考えてみると、
誰が見ても当然のことですが、
源頼朝の都市計画です。
ぼくはいままで、
このあまりのもわかりやすい
観光名所的な視点を
さけてきたのではないかと
最近思うようになりました。
地形や風土に基づく
都市計画と建築の設計・・・。
この普遍的なテーマで
鎌倉をみつめてこなかった反省・・・
からもう一度、
鎌倉を勉強し直して
みようと思いはじめました。
◇◇◇
【鶴岡八幡宮と若宮大路は、
鎌倉の都市計画の原点】
都市にはそれぞれ「核」があり、
「骨格」となる道があります。
平安京では大内裏と朱雀大路、
江戸では江戸城と東海道に続く本町通、
そして鎌倉の場合、
鶴岡八幡宮と若宮大路が
それに当たります。
若宮大路は、
鶴岡八幡宮から由比ガ浜に
まっすぐ延びる道で、
中央に「段葛」と呼ばれる
一段高くなった歩道を置いています。
「葛」とは葛石.檀の縁石のことです。
「段葛」という名は江戸時代以降のことで、
それ以前は「置石」「作道」などと
呼ばれており、
段上ではなかったようです。
この段葛を含めた若宮大路の
現在の道幅は約40m。
今でも十分に広いですが、
近年の発掘調査によると、
中世にはさらに広く60m近く
あったといわれています。
源頼朝は、鎌倉に幕府を開いた際、
由比ガ浜の海岸近くにあった
由比宮を移して
鶴岡八幡宮を現在の地に創祀し、
ここを起点に若宮大路を造りました。
鶴岡八幡宮と若宮大路は、
鎌倉の都市計画の
原点ともいえる存在なのです。
【鶴岡八幡宮は、
鎌倉幕府の政治的な中核】
ただし、
若宮大路に平安京の朱雀大路のような
華やかなイメージを与えることは間違いです。
やはり近年の発掘によると、
若宮大路沿いの屋敷は
いずれも大路側ではなく、
大路より両側には土手が延々と続き、
武士の町らしい防御的な姿を
見せていたことになります。
「吾妻鏡」によれば、
若宮大路に直接門を開けていたのは、
将軍の館と「好色の家」
すなわち歓楽街だけでした。
一方、鶴岡八幡宮は
鎌倉幕府の守護神ですが、
単なる宗教の場ではありませんでした。
例えば源頼朝の将軍任命の
辞令伝達式など
幕府の重要な儀式がここで行われ、
また開幕以前は
扇ヶ谷に近い寿福寺付近に
置かれていた将軍邸(鎌倉殿)も、
頼朝によって
鶴岡八幡宮東側に移されました。
ここは政所や侍所が置かれ、
館の周囲には
北条氏・三浦氏・畠山氏などの
有力武将の屋敷が集中していました。
鶴岡八幡宮は、
鎌倉幕府の政治的な
中核でもあったのです。
【山越えの街道の
「七口」と呼ばれる切通し】
若宮大路を鎌倉の「背骨」とすれば、
そこから周辺へと延びる道は
鎌倉の「動脈」にあたります。
鎌倉は、東・北・西の三方を山で囲まれ、
山越えなしには都市に入れない、
軍事都市として理想的な地形をもっています。
山越えの街道には
「七口」と呼ばれる切通しを
設けて防御を固めました。
金沢へと続く六浦道に設けられた
朝比奈切通し。
西国への出入口となる大仏切通しや
巨福呂坂など、
それぞれの口が
重要な機能をもっていました。
例えば絵巻「一遍上人絵伝」で、
鎌倉に入ろうとする
一遍上人と弟子たちが
幕府の役人たちに追い返されたのは、
西国から続く巨福呂坂でした。
切通しには今もその面影を
留めるのが多く、
中世鎌倉の姿を伝えています。
【中世都市鎌倉は
都市計画にとっての「境致」】
この守りの固い鎌倉という都市は、
山々を都市壁とする防御的な構成、
山から海へ走る都市軸、
その最奥に設けられた中核部など、
自然の地形を最大限に生かして
計画されていることがわかります。
禅宗では、建築と自然の一体美を
「境致」と呼び、その姿を理想としています。
建築と環境の共存が命題となる現在、
中世都市鎌倉は
都市計画にとっての
「境致」といえるのかもしれません。
(建築MAP横浜・鎌倉より引用)
◇◇◇
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