6月のはじめ、
建築雑誌「住宅建築」の編集部から
書評の依頼がありました。
その本は「堀口捨己建築論集」
堀口捨己(1895~1984)は、
言わずと知れた
日本近代を代表する建築家です。
また和風建築を近代化させた建築家として、
吉田五十八(1894~1974)、
村野藤吾(1891~1984)と
並ぶ巨匠建築家です。
果たして巨匠・堀口捨己が書いた本を
僕が書評できるのか・・・。
書評を引き受けることができるか、
ずいぶん悩みました。
吉田五十八と村野藤吾は
常に興味がある存在なので、
数多くの作品を見てきたし、
日影アトリエには蔵書もたくさんあります。
堀口捨己もそれなりの数の蔵書もありますが、
実物の作品で、
見たのは江戸東京たてもの園に建つ
「小出邸」のみでした。
堀口捨己はどこか遠い存在だったのです。
かと言って、
書評の依頼をお断りする理由は
みつかりませんでした。
勉強のために書評を書いてみようと思いました。
締め切りは約三か月後の8月21日。
まず「堀口捨己建築論集」を手に取り
読みはじめました・・・。
「なんと!難解な文章だろう」というのが
最初の印象でした。
本は7編によって構成されています。
1・建築の非都市的なものについて(1927年)
2・茶室の思想的背景とその構成(1932)
3・現代建築に表れた日本趣味について(1932)
4・新時代建築の神話その他(1939)
5・利休と現代建築(1940)
6・妙喜庵の利休茶室待庵(1940)
7・庭園序説(1982)
ほとんどの内容が
茶室と千利休についてです。
戦前という時代背景もあるのでしょうか。
文章の構成が複雑で、
読む説くのに時間がかかりました。
書評のために3回読みましたが、
いまだに理解できてないところが
たくさんありそうです。
そして、この書評を書くために、
あらためて堀口捨己を
勉強することにしました。
日影アトリエにある蔵書のほかに、
建築学会図書館に行って、
堀口捨己に関する本や建築雑誌の
ほとんどを読みました。
また堀口捨己の
建築作品の実物を見ずして、
書評を書けるものかと・・・と考え、
可能なかぎり見に行きました。
見に行った建築は、
・明治大学工学部生田校舎
・万葉亭
・常滑市立陶芸研究所
・如庵
・八勝館
の、5棟です。
文字数の制限は、3000字ぐらい・・・。
文章の内容で決めたことが二つありました。
ひとつは、例えば建築家・磯崎新など
堀口捨巳を評論した文章は
一切参考にしないこと。
堀口捨己に関する
ほとんどの本を読んだのは、
それらの文章を引用しないためでした。
もうひとつは、
わかりやすく軽い文体とすること・・・。
作文に苦しみぬきました。
作文にこんなにも苦しんだのは、
生まれてはじめてかもしれないと思うほどに・・・。
しまいには、
食欲もなくなり、痩せました・・・。
でも無事に、
締め切り間に合って入稿できました。
先週の10月19日に発売され手元に、
「住宅建築12月号」が届きました。
ページの最後の最後のほうに
見開きで地味に掲載されています。
追記:
この「堀口捨己建築論集」のほとんどは、
戦前に書かれていること。
ちょうど100年前、
堀口捨巳が28歳、
関東大震災1923年(大正12年)の年に
ヨーロッパ旅行に向かったこと、
などから以前もまして、
戦前の建築に興味をもつようになりました。
「関東大震災の以前・以後」
「戦争の以前・以後」
この二つの節目が、
日本の建築に
変化をもたらしたということを・・・。
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