8月18日から8月20日、
鎌倉芸術館で
「いいぞ!鎌倉 夏休み キッズプログラム
鎌倉の文化 大はっけん」
というイベントが開催されました。
昨年も開催された
「鎌倉市伝統文化伝承事業」です。
参加者の対象は小学生から中学生。
プログラムは、大きく二つで構成されていて、
参加自由・無料のプログラムは、
1. 鎌倉時代のうたと世界の音楽コンサート
2. 写真で鎌倉文化を感じてみよう!
3. 鎌倉の建物とその時に作られた世界の音楽
事前申し込みが必要なイベントは、
1. 円覚寺「龍隠庵」で
和尚の話を聞いて座禅を組もう!
2. 声をだして読む「平家物語」
3. 鎌倉彫をつかってみよう!
4. 建長寺伝来「けんちん汁」の
歴史を知って食べよう!
5. 鎌倉俳句教室
6. 鎌倉時代の衣装を着てみよう!
7. 小鼓を演奏してみよう!
8. 鎌倉の古い建物を知ろう!
9. おいしく楽しく茶道体験!
10. 民謡「鎌倉節」を唄ってみよう!
これらのプログラムの中で、
昨年に引き続き
「鎌倉の古い建物を知ろう!」
の講師を担当しました。
日にちは、
8月20日の日曜日、
14時から15時の1時間。
参加する子どもたちの定員は10名・・・。
お父さんお母さんたちと
一緒に参加してくれました。
「鎌倉の古い建物を知ろう!」
の具体的なテーマは
「神社やお寺、西洋館はどんな形?
塗り絵しながらデザインを学ぼう。」
前半では、
鎌倉の建築の特徴について解説し、
その後に好きな建築を
子どもたちに選んでもらって
図面に色塗りをしてもらうという流れ・・・。
まず最初に、
「鎌倉の建築にはふたつの顔がある」
のではないかなと思い、
1.中世の古都・鎌倉時代の神社仏閣の顔。
2.明治・大正・昭和初期の西洋館の顔。
というふたつの顔を解説しました。
◇
鎌倉の洋館のはじまりとは?
1. 1887年(明治20年)に
鎌倉海浜ホテル(海浜院)がつくられ、
2. 1889年(明治22年)に
横須賀線が開通されたのをきっかけに、
3. 鎌倉が観光や海水浴もできる
リゾート地として発展します。
4. この流れで皇族や華族や富裕層が
競い合うように
洋館建築の別荘をつくっていった。
5. 1899年(明治32年)に
鎌倉御用邸がつくられ、
鎌倉のブランド力に拍車がかかった。
6. 明治の終わりごろには、
鎌倉市の戸数の3分の1以上の
800軒以上の別荘があった。
7. しかし1923年(大正12年)の
関東大震災で
これら別荘の6割が倒壊した。
8. 震災後、大正末から昭和初期にかけて
町は復興し、多くの洋館別荘がつくられた。
9. 現在残る洋館建築は、
このような流れでつくられたものである。
というような説明を子どもたちに話しました。
◇
上の写真の右側が鎌倉海浜ホテル。
由比ガ浜の海辺に建つ建築ですが、
関東大震災にも耐えて残りましたが、
昭和20年に火事で
全焼していましました。
残っていたら、日本を代表する
洋館建築になっていたことでしょう。
左の写真は鎌倉御用邸
鎌倉海浜ホテルが写る
航空写真(写真中央やや下側)。
撮影時期は不明ですが、
おそらく昭和初期。
まわりに洋館らしき建築が点在しています。
現在、鎌倉市内に残る洋館建築の代表。
1.長谷子ども会館(旧諸戸邸)
2.古賀邸
3.旧華頂宮邸
4.鎌倉文学館(旧前田家別邸)
◇◇◇
次に
「中世の古都・鎌倉時代の神社仏閣の顔」
として、
お寺の伽藍配置について説明しました。
鎌倉の寺は、地形の影響を受けて、
伽藍配置が直線軸で構成されていることを
子どもたちに説明しました。
1. 建長寺
2. 円覚寺
3. 英勝寺
(総門が東入りになっており、
直線軸ではない例もあることを説明)
◇◇◇
今回、選んだ鎌倉の建築は8棟です。
1. 円覚寺舎利殿
2. 建長寺三門
3. 建長寺法堂
4. 英勝寺山門
5. 長谷子ども会館(旧諸戸邸)
6. 旧華頂宮邸
7. 鎌倉文学館(旧前田家別邸)
8. 寸松堂
◇
円覚寺舎利殿を題材にして、
鎌倉のお寺の意匠的特徴である
「禅宗様」の特徴を詳細に説明しました。
円覚寺舎利殿の断面図
円覚寺舎利殿の天井詳細
円覚寺舎利殿の正面外観
円覚寺舎利殿は、
これまで何度か内部に入りましたが、
昨年のキッズプログラムの準備のために、
鎌倉芸術館の館長さんと
内部にはいり外観とも撮影しました。
建長寺三門
鎌倉には2階建ての二重門は、
建長寺三門、
英勝寺山門、
円覚寺山門、
光明寺山門の四棟です。
建長寺三門の特徴のひとつである
唐破風について説明しました。
建長寺法堂
禅宗仏堂としては、
関東最大の大きさです。
この大きさにあわせて組物も大型で
十分の量感をもっています。
建長寺法堂では組物の特徴を説明しました。
英勝寺山門
英勝寺山門も禅宗様のデザインですが、
上層の屋根垂木が扇垂木で
下層が平行垂木としています。
屋根に反りがないのも特徴で、
このデザインを「英勝寺式」であると説明しました。
長谷子ども会館(旧諸戸邸)
関東大震災で大きな被害がなく、
鎌倉に残る明治期の建築として
非常に貴重な存在であること。
外観においても内観においても、
ギリシャ建築を思わせる造形密度、
職人技のレベル、
選ばれた素材など、
神奈川県内で
最高の明治の洋風建築ではないかと
個人的に思っていることを説明しました。
旧華頂宮邸
華族の建築は、
おおむね端正で品がある建築が多いこと。
旧華頂宮邸も
厳格に垂直と水平の材で統一されて、
整然としてハーフティンバーの
デザインであることを説明しました。
鎌倉文学館(旧前田家別邸)
デザインの要素がたくさんあり、
見学に行く機会があったら、
その「デザイン探し」を楽しむことも
楽しいかもしれないと説明しました。
寸松堂
屋根に三重塔や五重塔の頂部にある
相輪がのり、
城郭建築に見られる武者窓を用い、
お寺とお城の合体のような
奇抜な建築であることを説明しました。
◇◇◇
このように、
ほとんどの子どもたちが、
小学生であるにもかかわらず、
専門的な建築の説明をしても、
子どもたちは目を輝かせ、
時にはびっくりするぐらいの質問をしてきました。
ひとり僕がまるで君は「歴史博士」だね!
と言わせるほど歴史に詳しい子どももいました。
逆に僕のほうが勉強になりました・・・。
毎月一回おこなっている
「鎌倉みんなのけんちく学校」の子どもたちも、
同じように大学生に
教えてもいいような内容に、
くいつき楽しそうに学んでいます・・・。
子どもたちに鎌倉の建築の特徴を
説明している様子。
子どもたちやお父さんやお母さんが、
気になる建築を選び、色塗りをはじめました。
円覚寺舎利殿
寸松堂
建長寺法堂と鎌倉文学館(お母さん)
旧華頂宮邸
円覚寺舎利殿
鎌倉の建築について
いろいろと聞いてくれたお父さん。
建長寺法堂
寸松堂
実は、
鎌倉みんなのけんちく学校の
生徒さんである、えいた君も参加してくれました。
前日は、八王子の唐木建具店での
「とびらのわざ」の講義がありました。
連日の参加です。
とても嬉しかったです。
えいた君のお母さんは、建長寺三門。
えいた君のお父さんは長谷子ども会館。
妹さんは円覚寺舎利殿。
◇◇◇
建築にかぎらず、何かを学ぶときは
一方的に講義を聞くだけではなく、
自分の手で模写したりすることで、
対象の内部まで
入っていけるような気がします。
それによって対象が自分の身体の
一部になってくれるのではないか
という思いで、塗り絵を企画しました。
子どもたちみんなが、
真剣に楽しく参加してくれたのが
なによりも嬉しかったです。
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