「レーモンドの教会を巡る」フィールドワークに参加しました。
8月31日の土曜日、
「アントニン・レーモンドの教会を巡る」という
建築のフィールドワークに参加しました。
主催は「 多摩川建築塾 」
(塾長・元住宅建築編集長・植久哲男さん)。
僕は案内人という立場での参加でした。
フィールドワークは
午前中に目黒駅近くの
「聖アンセルモ教会」を見学し、
昼過ぎに地下鉄・神谷町駅から
徒歩10分ほどに建つ
「聖オルバン教会」を見学しました。
そのあと日影アトリエが設計した
「上大崎の家・一期工事」と
「上大崎の家・二期工事」の
場所をお借りして懇親会がおこなわれました。
聖アンセルモ教会は
1954年に竣工した
鉄筋コンクリート造(RC造)の教会です。
聖オルバン教会は
1955年に竣工した木造の教会です。
アントニン・レーモンドは
日本で教会をおよそ20棟設計しており、
その中でRC造と木造の代表作が
聖アンセルモ教会と
聖オルバン教会ではないかと僕は考えています。
(そう思う理由はまた後日・・・)
聖アンセルモ教会は
内外とも打放しコンクリート面のみで
構成された折版構造としています。
壁は二間(3.6m)間隔に
折版三角柱の壁柱が自立しながら連続し、
スリットの開口部から
西からの自然光を取り入れています。
天井は
三角形の折版スラブと
一枚のシェル状のスラブの組み合わせで
屋根面をつくり、
壁柱と屋根の構造が
内部空間にそのまま表れています。
コンクリートは鋼製型枠を使用しており、
その施工精度はみごととしか言いようがなく、
築後65年経過した今でも、
磨き上げた石のように鈍く光り輝いています。
聖堂内は約13mの正円が内接し、
その正円が断面と平面の
見えない規律となっています(僕の私感)。
入口を入ると約2.9mの天井高が
聖堂内に導いてくれます。
少しずつ聖堂内に歩いていくと
13mの内接球という高揚感が
からだ全体を包み込むように
舞い降りてきます。
教会は中庭を囲むように計画されています。
中庭を囲む回廊は
丸柱が
「梁のない」屋根スラブを支持しています。
教会の折版構造に
目をうばわれてしまいがちですが、
この回廊の構造は当時としては
かなりの冒険設計だと思います。
木造の教会「聖オルバン教会」。
アントニン・レーモンド(1888~1976)は
1919年、帝国ホテル設計施工の助手として
フランク・ロイド・ライトと共に来日し、
その後日本に残り設計事務所を開設します。
第二次世界大戦期間は
日本を一時離れますが、
晩年まで日本国内で作品を創り続けます。
設計した建築は多岐にわたりますが、
鉄筋コンクリート造の
デザインの多様性と比べると、
木造は(一部例外がありますが)、
一貫して丸太を使った斜材による
空間構成をひたすら追求していきます。
アントニン・レーモンドの木造は、
丸太を半分に割った
「鋏(はさみ)状トラス構造」が特徴で、
鋏梁構造の系譜の中で
この「聖オルバン教会」が
最高傑作であると僕は考えています。
(そう思う根拠はまたあとで・・・)
聖オルバン教会の聖堂内で
フィールドワークに参加した人たちと
記念撮影をしました。
フィールドワーク前日に
聖オルバン教会の構造モデルを
割りばしを使って
即席につくりました。
参加した人たちに
少しでも構造を
理解してほしいと思いました。
懇親会の会場となった
「上大崎の家・一期工事」と
「上大崎の家・二期工事」の二棟。
写真は2002年に竣工した
「上大崎の家・一期工事」の竣工当時。
上大崎の家・一期工事
2003年に竣工した
「上大崎の家・二期工事」の竣工当時。
内部空間は
大正13年に建築された
建築家・岡田信一郎設計の
洋館建築を復元したもの。
上大崎の家・二期工事
フィールドワーク
「アントニン・レーモンドの教会を巡る」のために
A3サイズの資料を15枚作製しました。
手持ちの蔵書と建築学会図書館の資料を
コピーし切り張りしました
(カッターナイフと糊で・・・)。
参加した人たちの
使い勝手のいい資料とするために、
なるべく図面を中心にしました。
図面は定規で測れるように
縮尺100分の1か
200分1か
50分の1に拡大縮小コピーしました。
資料を作成しながら
アントニン・レーモンドの建築のことを
ずっと考え続けました(二日間ぐらい・・・)。
フィールドワークの案内人でありながら、
参加者の中で
最も勉強させていただいたように思います・・・。
建築のフィールドワーク・・・。
いつも
一人で建築を見学することが
ほとんどですが、
集まって建築を見学していると
様々な意見や感想や疑問や質問が
とびだしてきます。
様々な意見や感想や疑問や質問が
「 探求の種 」を
生み出すことをあらためて感じました。
by y-hikage
| 2019-09-02 17:21
| 建築巡礼
|
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