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日日日影新聞 (nichi nichi hikage shinbun)

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広瀬鎌二のSH-1

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昨年の11月の終わり、


調べたいことがあり


田町の建築学会図書館に行ったら、


偶然「広瀬鎌二建築展SH+1回」が


開催されていました。


建築家・広瀬鎌二(19222012)は、


神経質ぐらいのストイックな作品を創る


作家であったということと、


反面、日本の伝統的建築について


「伝統のディテール」や、


重源についてのぶ厚い本である


「大厦成る―重源‐東大寺再建物語」などの


著者としても有名です。


「大厦成る―重源‐東大寺再建物語」


については


あまりのページ数の多さから途方もなく、


いまだ 1 ページしか読めていません。



     ○○○



広瀬鎌二(19222012)は、


1953年、鎌倉に自邸である


「 SH-1 」を発表し、


一連の軽量化鉄骨の住宅、


SHシリーズ」の端緒をひらきました。


広瀬鎌二はのちに


SH-131957)あたりから


本格的に建築の部品化の追求を行ない


工業化の模索へと向かいますが、


この創始期の住宅は


将来にそうした展開を期しながらも、


むしろ伝統的な真壁造の軸部を


鉄骨のアングルに置きかえた形で


つくっていきました。


広瀬鎌二はSH-1の発表にあたって、


「近代工業が生産する、鉄・ガラス・レンガ・コンクリート等の材料を、その各々が持つ力学的材料的特性を十分に活用して、新しい住居を創造したい衝動」


これらをつくらせたと述べました。


当時、構造材として使用することなど


思いもよらなかった


アングル材と鉄筋の組み合わせから


つくり出された架構は、


その構造材の細さと材質感によって


日本には珍しいモダンな感覚の空間を


生成できることを示しました。


鋼材とレンガの壁や


濃紺に塗られたブロックなのなどの


取合わせも珍しく、


構造体から解放された


ワンルームの平面も当時の人々に


魅力的に映りました。


しかし技術面での


処理の面倒さなどもあいまって、


池辺陽やRIAなどが試みたほかは


あまり鉄骨造を追及する建築家は


生まれませんでした。


その中で広瀬鎌二のみが


鉄骨造の空間の明るく軽快な感覚を


追及しつづけ


SH-30(1960)にひとつの結実を見せました。



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チラシの裏の解説の冒頭に



     ○○○



「 God is in the detail 」(神は細部に宿る)


というミース・ファン・デル・ローエの言葉を、


広瀬鎌二が著した


「伝統のディテール」が思い起させた、


とルイス・カーンが


広瀬鎌二に宛てた手紙の中に書いている。



     ○○○



と書かれていました。


ルイス・カーンが


広瀬鎌二宛てに


手紙を書いていること自体が驚きです。



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右側が


ルイス・カーンが


広瀬鎌二宛てに書いた手紙。


左上の写真は広瀬鎌二自邸の


「 SH-1 」

左下の写真は


「 SH-13 」



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「伝統のディテール」の表紙。


日影アトリエ製図室の本棚から・・・。



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「 SH-1 」


軒の高さは2260㎜です。



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「 SH-1 」


レンガ張りの台所



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「 SH-1 」のパネル展示。



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展示開場には、


原寸の軸組模型が展示されていました。



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鉄骨アングルと鉄筋で構成された小屋組み。


アングルは65㎜×65㎜。


鉄筋は9㎜の丸鋼。



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原寸軸組模型の脇に、


制作図が展示されていました。


この図面が一番勉強になりました。



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製作風景の写真



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おそらく工場での仮組風景



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「 SH-13 」のパネル展示



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シャープすぎるほどの


ガラスと鉄骨の箱



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by y-hikage | 2019-02-27 11:21 | 建築巡礼 | Comments(0)
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