20年前の1997年10月に竣工した
「 ひののあん 」
敷地の四方を囲む板塀を
全面的に改修することになり、
過去の資料を眺めていました。
ひののあんは、
建築雑誌「住宅建築」に掲載されたのが
1998年6月号のことでした。
掲載時の解説文を読んでみます。
解説文を書いたのは設計者の日影良孝。
文章表現のつたなさが伝わってきます。
読んでいて冷や汗がでてきます・・・。
・ ・ ・ ・
建主と会う前に敷地を見に行った。
つい最近まで畑だったところを区画整理した風景であった。周辺には建売住宅が建てられ、いずれそれらが群として建っていくだろうと容易に想像できた。
僕は、なぜ既存の風景を人の手で区画整理すると乾いた磁場になるのだろうかと不思議に思いながらその場所を離れた。
僕の打合せメモにはこう書かれている。
「閉じていて開いている」
僕はこのメモを書きながら、敷地を外部から閉ざし、外部とは別の空気をつくろうと思ったにちがいない。
そして僕は周囲の乾いた磁場が気になっていた。
10年後の風景は建売住宅に取り囲まれているであろうか。
たとえば都心でビル開発に取り残された古びた日本家屋を思い浮かべた。その古びた日本家屋は、町の潤いであり、人々の記憶である。
今回設計する家を古びたものにするつもりはなかったが、古びてなお味のある家にしたかった。
だから普遍的な住まいとはどんなものなのかという基本的なことが設計のテーマだった。
平屋の方形屋根を無塗装の杉板塀が取り囲む。
最低限の間取り、深い庇が覆う広縁でポカポカと四季を楽しむ。
10年後は庭に植えた木も育ち、周囲から見るとこの敷地はポッカリと浮かぶ森のようになっている。
このようなイメージは、確認こそしていないが建主と共通して持っていたものだと思っている。
「ひののあん」は
3人の建築写真家が撮影しています。
〇住宅建築掲載時は、平井弘行氏。
〇彰国社の共著本掲載時は、畑拓氏。
(写真番号1~9)
〇チルチンびと掲載時は、畑亮氏。
(写真番号10~17)
畑拓さんの写真は、完成間もない時期。
畑亮さんの写真は、完成して数年後の時期。
畑亮さんと畑拓さんには、
30年ぐらいのおつきあい・・・。
長年のあいだ大変お世話になっています。
写真をみると
木の質感や庭の風景の変化がみてとれます。
写真NO.18から22は最近撮った僕の写真です。
写真NO.1
写真NO.2
敷地北側に広がる畑は今はなく、
新しい住宅がみっしりと建っています。
写真NO.3
写真NO.4
写真NO.5
写真NO.6
写真NO.7
写真NO.8
写真NO.9
写真NO.10
写真NO.11
写真NO.12
写真NO.13
写真NO.14
写真NO.15
写真NO.16
写真NO.17
写真NO.18
写真NO.19
写真NO.20
写真NO.21
写真NO.22
竣工間もない写真に置いてあった
茶の間のちゃぶ台。
20年前と同じように使っていました。
そういえば設計打合せの時も
前の住まいで使っていました。
その時すでにいい味がでていました。
ひののあんの配置図と平面図