六本木の鳥居坂に建つ
「 国際文化会館 」は、
坂倉順三、前川國男、吉村順三の
3人の共同設計であることは有名です。
この建築をいずれ
見学してみたいと思ったきっかけは、
吉村順三記念ギャラリーでの
展示を見たからでした。
その展示は、2015年5月の
「吉村の増改築の考え方」というテーマで、
「 国際文化会館・小食堂増築 」が
事例のひとつとして紹介されていました。
まず、1955年に竣工した
国際文化会館の概要を知るために
松隈洋氏の文章を読んでみます。
○ ○ ○ ○ ○
国際文化交流の促進を目的に、ロックフェラー財団などから巨額の寄付を元に、閑静な屋敷町の面影を残す鳥居坂の一角に建てられた、講堂や会議室、宴会場、宿泊部門などからなる文化施設。
当時の建築界を代表する坂倉順三、前川國男、吉村順三の3人が唯一共同で設計した貴重な建物である。
鉄筋コンクリートの薄い屋根、プレキャスト・コンクリートの柱や梁と、大谷石や大きな木製サッシュ、障子などを組み合わせて、近代的でありながら日本的な雰囲気をもった透明感あふれる端正な空間が生み出されている。
1976年には、前川國男の設計により大規模な増築が行われたが、今なおその原型をよくとどめている。
2004年、理事会は改築計画を発表、その行方が注目されている。
(文化遺産としての
モダニズム建築DOCOMOMO100選展・
図録より引用)
○ ○ ○ ○ ○
次に吉村ギャラリーに展示されていた
国際文化会館・小食堂増築の
解説を読んでみます。
○ ○ ○ ○ ○
国際文化会館・小食堂増築
本館は、1955年に竣工して、人が集まれるところは、講堂以外には大食堂と18㎡で10人位の利用できる特別食堂だけであった。
3年後の1958年に大食堂に隣接した特別食堂を潰して、3~40人が利用できる部屋を増築した。
○ ○ ○ ○ ○
国際文化会館には、
すでに取り壊されてしまった
吉村順三が設計の
「 国際文化会館住宅 」
が建っていました。
2棟連棟型・板張り切妻屋根の住宅です。
このシンプルで美しいプロポーションの住宅は、
設計の参考にするために
何度となく作品集を見てきました。
作品集の解説文を読んでみます。
○ ○ ○ ○ ○
坂倉順三、前川國男、吉村順三が共同で設計した国際文化会館に隣接する、館長、副館長のための連棟住宅。本館の外観が平側をプレキャスト・コンクリートの柱梁による真壁風、妻側を本実型枠コンクリートによる縦羽目風とされたことに対応し、この住宅では平側を木造の真壁、妻側を杉板の縦羽目とし、本館との文脈的な関連づけをしている。
(JA59・吉村順三より引用)
○ ○ ○ ○ ○
国際文化会館住宅の外観と室内
(JA59・吉村順三よりからの転載))
取り壊されてしまったのが残念な建築です。
アプローチから見える国際文化会館の側面。
近代建築らしい佇まいを感じさせます。
今回、坂倉順三、前川國男、吉村順三の
3人よる共同設計である
国際文化会館を見て思ったのは、
共同設計の難しさでした。
どこが坂倉順三的か、
どこが前川國男的か、
どこが吉村順三的か、
見る眼が弱いせいでしょう、
伝わってきませんでした。
左手向こうに見える平屋の建築が
吉村順三設計したが小食堂。
池に浮かぶように建つ食堂棟。
水平の軒先とテラスのスラブ。
ここからの写真と図面は、
吉村順三記念ギャラリー
第51回「吉村の増改築の考え方」より・・・
図面にマーカーで書かれた部分が食堂棟。
次回、
吉村順三記念ギャラリー・第71回
「モテルオンザマウンテン」に続く・・・。