8月のとある平日、
目黒区大岡山にある東京工業大学の
地球生命研究所・
ELSI(EARTH-LIFE SCIENCE INSTITUTE)の
建築を見学する機会をいただきました。
ELSI新研究棟は
建築家・塚本由晴教授の設計によって
2015年に竣工した研究施設です。
この建築の見学しながら
建築よりも研究テーマに興味をいだきました。
ELSIの研究のゴールは
「地球はどのように生まれ、
生命を育み、進化してきたのか」という
人類の根源的な謎の解明です。
「生命惑星学」の国際研究拠点を目指し、
学問領域の枠をはずし
異分野の研究者を集め研究する
「融合研究」を目指しています。
研究者の4割が外国人で、
研究者たちが自然と集まり、
日常的に議論が生まれることを
主眼とした研究所としています。
設計にあたり、
塚本由晴教授は以下のように書いています。
※ ※ ※ ※
設計に当たって最初に考えたのは、非常に国際的な研究所として、いろいろな方の交流を促す工夫が必要だということ。またWPI(文部科学省世界トップレベル研究プログラム)という枠組みで研究を掘り下げ、外に発信していくことも重要です。つまり、研究・交流・発信の3つの機能を全部備えた建物が必要でした。
研究者の交流の場には、建物の中心に「アゴラ」という広い交流スペースを設置しました。南北の窓を開くと風通しが良く、大小さまざまな机とイスで、お茶を飲みながら自由に議論ができる空間です。東西の端にはそれぞれリフレッシュルームとトイレがあり、研究者がそこに行くとき、階段を使うときにもアゴラが視界に入り、自然と人が出会うようになっています。
発信に関しては、ワークショップができる「ギャラリー」と、発信者が集中できるよう独特の壁のねじれと流れを持つ「ホール」を用意しました。
(ELSI通信・Origins より引用。図版とも)
※ ※ ※ ※
この建築の主色は赤のようでした。
「アゴラ」の黒板も赤系。
アゴラの窓の障子。
かつて東工大の教授だった
谷口吉郎の基本的なモチーフであった
縦長の線を採用しているものと思われます。
アゴラに隣接する小さな教室。
日本的な廊下。
国際的な研究所であることから
日本的な意匠を取り入れているとのこと。
和室の障子。
研究室。
本や資料がきわめて少ないシンプルな空間。
データのほとんどは、
スーパーコンピューターに
つながれているとのこと・・・。
研究室の天井。
構造表しの意匠は、
茶室の駆け込み天井を
イメージしていると思われました。
障子は木製ではなくアルミ。
細長い廊下が単調にならぬように
クランクさせてあります。
メンテナンスを容易にするため
設備系統は露出としています。
朱色のじゅうたんが印象的。
階段室の壁や天井も朱色。
朱色を切り取った天窓。
天窓の詳細。
ホールの入り口。
入り口には見えません。
まるでクロゼットの扉のようです。
ホールの内部空間。
1階の床に張ってあった、
10億年前から38億年前の岩石のスライス。
1400年前の法隆寺までは
同時代感覚をもてますが、
38億年前となると
「 はるかかなた 」という言葉も
近すぎるほど・・・。
遠すぎる時間に
呼吸困難になりそうでした・・・。
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東京工業大学の建築・その2に続く・・・