
晩香廬は
修学院離宮とイメージが重なりました。
※
東京都北区王子の飛鳥山公園に建つ
晩香廬(ばんこうろ)」は、
日本近代経済社会の父、
渋沢栄一の喜寿を祝して、
清水組(現清水建設)が贈呈した小亭です。
完成は、1917年(大正6年)のこと・・・。
日常的に多くの賓客を招くための
客間のような機能をもち、
新しい意味の茶室建築と評され、
西洋風茶室として設計されました。
屋根は赤色の瓦葺きですが、
軒の深さと低さは、
日本的な茶室建築の
プロポーションを受け継いでおり、
この美しい矩計断面寸法が
建築美を支えています。

この建築を今回あらためて見て、
なにかの建築に似ていると思いました。
外観のプロポーションにおいて・・・。
そのなにかが思い出せなく、
もやまや感が続いていましたが、
僕の膨大な?建築蔵書を眺めていて、
ついにわかりました。
修学院離宮・・・・。
修学院離宮の「 寿月観 」

修学院離宮の「 客殿 」

修学院離宮の「 楽只軒 」

晩香廬の
外壁は土壁仕上で、
四隅に黒紫色の煉瓦タイル張りとしています。
土壁は錆土壁として
侘びた表情を創り出しています。
茶室を作り込むように
手のこんだ仕事をしていますが、
けして華美な印象はありません。



出窓の意匠やテラスドアの
足元まわりの納まりも考え抜かれていて、
あっさりと見えますが、
これ以上ないほどに整っています。



裏側は全面タイル張りとしています。
防火のためでしょうか。



談話室は、
緩やかなに傾斜する勾配天井で、
化粧の棟木と隅棟の縁取りに
鳩やリスや葡萄などの
石膏細工をほどこされています。

腰壁は萩の茎を真鍮釘で留め、
上部を茶室風に
青貝まじりの砂壁としています。




個人的に若干、
違和感を感じたのは暖炉廻りの意匠・・・。
空間のスケール感の中で
主張が大きすぎるような気がしました。

そして造作の意匠で一番好きなのは、
廻り縁のかたち。
面なし直角段々のかたち。
このかたちが
けしてあまったるくない
渋沢栄一の生き方を
表現しているような気がしました。


次回、晩香廬の雨といに続く・・・。
