先月の9月14日、
「住宅医スクール2017東京」で
第四講義の講師を受け持ちました。
昨年の住宅医スクール2017東京では、
受講生として
6月から2月までの8か月間受講し、
欠席をせずに終了証をいただいた身分です。
その受講生が
今年の「住宅医スクール2017東京」で
講師を努めるなど考えてもみませんでした。
大勢の人前で話すことなど
最も苦手とする僕など、
建築を専門とする建築技術者に
建築について講義をするなどできるわけはないと、
断ろうと思いましたが、
建築家の三澤文子先生からの
直々の依頼であったので
お断りすることはできませんでした。
講義のテーマは、
「 再生して住み継ぐ家 」
設計の仕事を自立した
26歳から現在にいたるまで、
再生した(改修した)設計実例を
説明するかたちで、
1時間半の講義をすることにしました。
講義資料は、
この講義のためにあらためて
作成したのですが、
最初の項目として使用したのは、
1991年に作った「 住み継ぎBOOK 」にしました。
今回ひさしぶりに
この「 住み継ぎBOOK 」を読んでみて、
その内容にとても感心しました。
「 住み継ぎBOOK 」は、
当時、20代の若者を中心とした、
研究者、学生、文学者、主婦、建築設計者・・・
などが集まった「住み継ぎネットワーク」の
メンバーが編集した、
A4版・14頁の薄い冊子です。
( 「 住み継ぎ 」という言葉は、
この若いネットワークの集団が生み出した言葉です
ブログ:日日日影新聞にリンクあります )
僕も原稿を数ページ担当しましたが、
加藤雅久氏(現在:居住技術研究所)の
原稿の内容が26年前に書かれたにもかかわらず、
現在最も必要とされている
建築や生活の技術論を語っていたのには驚きました。
「 住み継ぎBOOK 」では、
はじめのページで5つの柱を立てます。
1・手放す人と欲しい人の出会う場所を
考えていきたい。
2・家を建てる技術を考えていきたい。
3・素材として木を考えていきたい。
4・住む行為の広がりを考えていきたい。
5・住むことの経済学を考えていきたい。
次に加藤雅久氏のページに移ります。
加藤雅久氏のページのタイトルは
「 住み継ぎ経済学のすすめ
(省資源時代、地球の住み継ぎ方を考える) 」
加藤氏の原稿を引用してみます。
(かなり長文・・・)
※※※※※※※ ※
省エントロピー社会再び
エントロピーという言葉がある。もともとは物理学用語で、拡散の程度を表す物理量である。エントロピーは直接見えるわけではないが、われわれはそれを廃棄物や廃熱という形で確認することができる。
エントロピーは増大するが減少はしない(熱力学第2法則)。また増大に限界があり、そこに達するとあらゆる活動は止まる(熱的死)。地上の生物は物のエントロピーを出さないように循環しながら全体として熱エントロピー(廃熱)を出し、地球はそれを宇宙に追い出す(放熱)ことによって、内部がエントロピーで満たされるのを防いでいる。ダムで例えていうなら、放流して発電した電力で再び水を汲み上げているようなものである。
われわれ人間社会も、近代以前は生物循環を前提とし、「山を背に、田畑を前に、人家在り」というような暮らしだったが、工業技術の導入と発展により、大量生産・大量消費を繰り返し、ついに地球規模での環境バランスを揺るがすまでになった。これはダムを一斉放流しつづけるようなもので、宇宙が熱的死に向かって崩壊するよりもはるかに速いスピードで、エントロピー増大の限界を迎えることになる。あと数年で、確実に。
商品化住宅が20年を待たずして建て替えられ、解体される度に、そのほとんどがゴミとなることをご存じだろうか。それでなくても、飽和状態の産業廃棄物の3分の1は、スクラップ・アンド・ビルドを繰り返す建設廃材なのである。もはや生産→消費→廃棄という一方的な流通を続けることは不可能なのだが、ただ単に一つのものを大切にし、限られた枠の中で生活するとしたら、地球規模での経済の崩壊と社会不安に陥るだろう。それよりも、再資源化を含めた循環型の流通システムで経済を維持していくために、モノそのものが最初に持っていた価値をいかに越えて利用していけるかという判断を、自ら働かせるべきである。そうして少しでもエントロピーの増大を節約するように、意識を変えていかねばなるまい。
例えば、住居。古い民家を再生して住み継ぐ。住み継ぐ人と時代に合わせて再生され、性能は変化し、住まい方も多様化する。住居は、住み継ぐことによって、モノとして最初にもっていた価値を越えて生き続けることのできる能力があることを、心に留めておいて欲しい。
時代と住居の表のなかで、
これからの世界観は「エコロジー」であり、
これからの社会構造は「省エントロピー」であり、
これからの経済構造は「地球環境型経済」であり、
これからの住居のあり方は「住み継ぎ」である。
と語っています。
また住み継ぎのフローチャートを
以下のように提案しています。
1・気に入った住居を見つけ出すこと。
2・先住者との対話の中で、
住居や外部環境とのつきあい方
(先住者の居住サポートシステム)を学ぶ。
3・住居と自分との対話の中で、
自分なりの住まい方を考える。
4・住居は必要に応じて移築・修理・改装する。
5・再生した住居の維持管理の方法など、
新たな住まい方のためのマニュアルを考える。
6・再生した住居や外部環境とのつきあいを深める。
7・住居とのつきあいの中で
発見したことがらをもとに、
必要の応じて改修や修理をしたり、
住まい方のマニュアルを変えていく。
8・人間、住居、環境を結ぶ、
新しい居住サポートシステムがつくられていく。
※※※※※※ ※
以上が、加藤雅久氏のページの内容です。
「住み継ぎBOOK」が発行されたのは、
ちょうど僕の処女作「鎌倉の大屋根」が
完成してから2年後のことでした。
それから26年がたちますが、
基本的な設計思想に