昭和29年田園調布の家・その2
大田区の閑静な住宅地に、
昭和29年に建築された
モダンな数寄屋の住宅が建っています。
施工は、数寄屋建築で有名な水澤工務店です。
全体的な意匠は、数寄屋建築の巨匠である、
建築家・吉田五十八に通じるところがあり、
開口部回りを中心に、その特徴がみられます。
※
長い間、この家を守り続けてきた、
お母様が、お亡くなりになり、
どのようにすれば、
この家を住み継いでいけるかどうか、
相談を受けています。
玄関回り。
正面に、片引きの玄関引き戸
(腰舞良ガラス障子)が見えます。
右の下駄箱の上にも、
ほぼ正方形の障子があります。
壁と天井は、素材感を抑えるために塗り壁とし、
左手の壁は、均質で光沢がある突板の
合板が張られています。
ここでは、紹介できませんが、
この家を囲む、庭も素晴らしく、
町並みを歩く人たちに、潤いを与えています。
家の窓は、この庭とのつながりを、
考慮に入れて設計されています。
例えば、玄関東側の正方形の障子。
正方形の障子は、片引き障子で、
壁の中に引きこまれます。
障子を壁の中に引きこむと、
繊細なガラス戸を通して、
玄関先の切り取られた庭が垣間見えます。
玄関側から、居間を見ます。
庭に面して、コーナーの
大きな掃出し窓になっています。
この掃出し窓は、障子が引き込まれる設計です。
(現在は、アルミサッシに変わっているために、
障子のみが、壁に引き込まれます。
居間から、北側を見ます。
居間の北側の飾り棚にも、
庭の景色を切り取る、
額縁のような窓が設けられています。
居間、南側全景。
居間北側の引き込み障子の詳細です。
障子を引き込み、ガラス戸を引き込むと、
何もなくなってしまい、
より庭の景色が美しく切り取られます。
この窓枠を注意深く見ると、壁と枠の関係が、
ハッカケになっていることに気が付きます。
景色の額縁を、より繊細に見えるように、
余計なフレームを消し、
視線を妨げる部材を最低限にするための、
細部の意匠なのです。
by y-hikage
| 2013-05-31 13:58
| 田園調布の家
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