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日日日影新聞 (nichi nichi hikage shinbun)

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庄司紗矢香の読書日記

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本を選ぶきっかけは、

新聞の書評によることが多い。

日本経済新聞夕刊に

ヴァイオリニストの

庄司沙也加が

書評を連載していることを知り、

逗子の図書館でコピーをして読む。

庄司沙也加は、

最も好きなヴァイオリニスト。

連載は四回だけだったが、

興味深く彼女の文章を読んだ。

庄司沙也加が選んだ四冊は、


スティル・ライフ:池澤夏樹著。

地下室の手記:ドストエフスキー。

源氏物語入門:ドナルド・キーン監修。

ソロモンの歌・一本の木:吉田秀和著


初回の

スティル・ライフ(池澤夏樹著)

については、

このような文章を綴っている。


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バックには必ず本を入れていて、電車に乗ったら開く。夢中になって改札を出て歩きながら読み続けてしまうこともある。私にとって読書は食事と同じ。脳みそが栄養を吸収する時間なのだ。

数年前、作曲家の細川俊夫さんに薦められて、池澤夏樹さんの小説を手に取った。独特な世界観に興味をそそられ、立て続けに読んだ。なかでも忘れられないのが「スティル・ライフ」。山の写真を撮るのが趣味の男性が、大きく広げたシーツにプロジェクターで次々と写真を写し出し、主人公に見せるシーンがある。

「ただの山の写真だ。だから見方にちょっとこつがある」と男性はささやく。「なるべくものを考えない。意味を追ってはいけない」

すごくわかる気がした。なんだか演奏するときの心境に似ている。

演奏会に向けて音楽家は何百時間も練習を重ねる。作品の歴史はもちろん、ありとあらゆることを勉強し尽くす。そのうえで実際に観客の前に立ったら、一旦、リセットする。なぜなら、音楽はすべて意味を説明できるものでないから。説明できないものを表現するところに神髄がある。本番でどこまで無心になれるかが勝負なのだ。

小説の中で主人公は次第にこつをつかみ、「自分の意識を消すことがうまく」なり、「ぼくの全体が風景を見てとる目に還元された」という境地に至る。私も、私の全体を音楽を聴く耳に還元したい。そう思いながら舞台に立っている。


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そして4回目の

ソロモンの歌・一本の木(吉田秀和著)

については、

このような文章で綴っている。


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前略

中でもニューヨーク近代美術館で見たクレーの絵が忘れられない。

どこまでも広がっていくような、軽やかな色彩と線の連なり、一目見た瞬間、とらえられて動けなくなった。気づいたときは涙があふれていた。自分でも驚いた。こんな風に感動を与えてくれる美術というものを心から愛している。そして同じように、音楽も、本当に愛している。

音楽評論家の大家、吉田秀和さんの「ソロモンの歌・一本の木」に魅力を感じたのは、時代もジャンルも超えて好きなものを蓄えていく柔軟さに共感したからだ。

中略

あらゆる話題が独自の視点で明快に論じられる。

「クレーは音楽的だといわれているが、そういうことは、曖昧な言い方にしかきこえない」。そう言い切って、画家の描く線を同時代の無調音楽の構造と比較しながら分析していく手並みの鮮やかなこと。

後略


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日本経済新聞夕刊

20171019日・119

読書日記より引用


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庄司紗矢香の文章の中で特に共鳴した箇所は、

この部分・・・・


「 なるべくものを考えない。

意味を追ってはいけない 」

すごくわかる気がした。

なんだか演奏するときの心境に似ている。

演奏会に向けて音楽家は

何百時間も練習を重ねる。

作品の歴史はもちろん、

ありとあらゆることを勉強し尽くす。

そのうえで実際に観客の前に立ったら、

一旦、リセットする。

なぜなら、音楽は

すべて意味を説明できるものでないから。

説明できないものを

表現するところに神髄がある。

本番でどこまで無心になれるかが勝負なのだ。


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どこか建築の設計に似ていると思った。

建築の着工にむけて、

数えきれないほど、家族と会話を重ね、

スケッチを重ねていく。

そしてある瞬間、

すぅーと厚い壁から抜けたように、

全体が調和するときが訪れる。


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4冊の本の中で、

「ソロモンの歌・一本の木」に

興味をもった。

僕の専門外である音楽を、

なにひとつ言葉や文章で表現できない。

そのもどかしさをいつも感じている。

だから

どんな本なのかとても興味がある。


時代もジャンルも超えて

好きなものを蓄えていく柔軟さを

この本を読むことで養いたいのだ。


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Sayaka Shoji and Dmitry Vasiliev in Omsk(1)





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by y-hikage | 2017-12-03 08:46 | 日影アトリエの本棚 | Comments(0)
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