谷口吉生の建築
6月の日本経済新聞・文化欄の
「私の履歴書」は、
現在、世界的に活躍する
建築家・谷口吉生(たにぐちよしお)でした。
毎朝、読んでいるのは毎日新聞なので、
6月の私の履歴書は図書館で
コピーをしながら読みました。
言うまでもないことですが、
谷口吉生の父は、
ホテルオークラのメインロビーの設計で
有名な建築家・谷口吉郎です(~1979年)。
親と子の作風は、一見すると
全く別の世界であるように見えますが、
その清らかな意匠は、
共通するところが多いように
僕は思ってきました。
「私の履歴書」を読んでみて、
息子・谷口吉生は親のことを
強く意識してきたことがわかりました。
思えば、僕がまだ建築の学生の頃なので
36年も前のことです。
図書館で建築雑誌「新建築」を
眺めていて見つけた、
谷口吉生の作品
「資生堂アートハウス」に衝撃を受けました。
当時の僕は、泥臭い手仕事派の
吉阪隆正や象設計集団に夢中だったので、
まったく正反対の「資生堂アートハウス」の
逃げのないストイックさにめまいを覚えました。
この建築の実物は今だに見たことはなく、
東海道新幹線の車窓から一瞬見えて、
あっという間に通り過ぎてしまう存在です。
新聞の連載を読みながら、
今までどれぐらいの
谷口吉生の建築を見たことがあるだろうかと、
パソコンの中に眠っている
データを発掘してみることにしました。
まずは豊田市美術館の敷地内にある
茶室「一歩庵」と「豊祥庵」。
まさか豊田市美術館の中に
数寄屋建築があると思わなかったので、
とても嬉しかったのを覚えています。
ところどころの詳細の意匠が
父・谷口吉郎に似ています。
おそらく初めての和風建築のはず、
それにしては完成度の高い建築です。
谷口吉生の作品の中でも好きな建築です。
「一歩庵」の外観
「一歩庵」の内部空間。
立礼の茶席です。
「豊祥庵」の外観。
「豊祥庵」の躙り口。
「豊祥庵」の三畳台目の席。
中柱の袖壁をよしずにしていることで、
涼やかさを演出しています。
豊田市美術館の全景。
水を張ったランドスケープと一体となる建築。
この設計手法は、一貫しています。
豊田市美術館の全景。
豊田市美術館の内部空間。
乳白色のガラスから入る柔らかい自然光。
豊田市美術館の内部空間。
谷口吉生の空間は必ずと言っていいほどに、
天井に余計なものがありません。
上野にある法隆寺宝物館。
この宝物館は建築も素晴らしいのですが、
展示内容と展示方法が素晴らしいです。
法隆寺おたくの僕にとって、
展示されている宝物を
間近で見れるので嬉しい場所です。
法隆寺宝物館の外観。
法隆寺宝物館の外観。
やはり建築が水と共にあります。
香川県丸亀市の
猪熊玄一郎現代美術館。
駅前広場にドーンと建っていて、
建築が猪熊玄一郎の作品となっています。
このおおらかさが、
猪熊玄一郎の作風を表しているようです。
猪熊玄一郎現代美術館の内部空間。
山形県酒田市の土門拳記念館。
水と一体とする初めての作品?
写真家・土門拳は好きな写真家です。
土門拳の作品を
一度にたくさん鑑賞できる貴重な場所。
中庭の作庭と彫刻は、
イサム・ノグチ。
土門拳記念館の内部空間。
最近完成した
京都国立博物館「平成知新館」。
国宝建造物・三十三間堂の隣の敷地に建っています。
やはり水と共にある建築。
京都国立博物館の内部空間。
タテのラインを強調した意匠は、
ぐっと父・谷口吉郎に近づいています。
東京の青山通りに建つ
フォーラムビルディング。
手前の美しいビルは、
吉村順三設計の
青山タワービル。
フォーラムビルディングは、
谷口吉生自身が隅々まで
ディテールを直接手がけた
装飾的要素を
切取り除いたシンプルな建築。
建築のプロポーションに合わせて
極限まで構造体を細くしています。
新幹線の車窓からしか
見たことがない資生堂アートハウス。
葛西臨海公園展望広場+レストハウス。
いつ行ったか忘れるほど昔のこと。
洗練されたガラスのドームが、
海に浮かんでいるように見えました。
ぜひもう一度行ってみたい場所です。
岩手県の安比高原に建つホテル安比グランド。
スキー場に併設された建築。
岩手の実家から近いと言えば近いので、
昔、スキーに行ったときに見た建築。
谷口吉生の作品と知ったのは、
かなり後になってから・・・。
ここからは、
谷口吉生の父である
谷口吉郎の作品をいくつか・・・。
東京国立近代美術館。
この建築の
柔らかいプロポーションが好きです。
東京国立近代美術館の内部空間。
改修される前の大きな階段がよかった。
東京国立博物館東洋館。
東京国立博物館東洋館。
ホテルオークラのメインロビー。
繊細な障子の意匠と
照明の調和が美しかった。
ホテルオークラのメインロビーを
2階の渡り廊下から見下ろした景色。
ホテルオークラのメインロビー。
現在、ホテルオークラは建て替え中で、
このロビーは、
新しいホテルオークラのロビーとして
一部復元されるということです。
その設計は、
息子である谷口吉生が担当しています。
谷口親子の
寡黙で清らかな建築でした。
(※ 柱:モノクロ写真は
デジタル写真がないため、
新建築の写真を転載しています)
by y-hikage
| 2017-07-17 16:52
| 建築巡礼
|
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