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日日日影新聞 (nichi nichi hikage shinbun)

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吉村順三設計の湘南茅ヶ崎の家に行きました。

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湘南茅ヶ崎の家について、

完成して間もないころのことを、

建主の寺田朝子氏が書いています。

その文章を一部引用してみます・・・。



この場所は、茅ヶ崎の駅から山のほうへ車で10分ほど入った眺望のよいところで、2階の居間からだと茅ヶ崎の海岸や菊竹さんの設計された「パシフィックホテル茅ヶ崎」を見ることができます。
吉村先生が土地を見に来られて、最初にお考えになったことは、盛り土をして生活スペースを2階に上げることだったようです。
2階のテラスからそのまま庭に出られるように土を盛って、また、それがわからないぐらい自然の高さなんです。盛り土もほとんど、コンクリートの基礎を打つ時に掘った土を寄せ集めてこれだけ盛っているんです。
2階の玄関へのアプローチの階段も、なだらかにカーブして自然ですね。1階からも出入りできますが、これがまた便利です。車ごとガレージに入って、ガレージの扉は自動ですから、そこからすぐ2階へ上がることができます。雨の日も傘が必要ないんです。これはもうアメリカ風の家ですね。普段の出入りは1階のガレージを利用していますが、これも土を盛ったおかげでできたんですね。
1階にはゴルフ好きの主人のお客様にくつろいでいただけるホールと、宿泊室を兼ねた和室があります。ホールの床は大谷石張りで、ゴルフ靴をはいたまま自由に出入りできます。また、小さな子どもたちが外で遊んで汚れた手足で入って来ることもでき、食べものなどをこぼしても気にならないスペースです。
和室には小さな水屋が付いていてたまにお茶をたてたり、邦楽を勉強したりしています。孫に女の子がいますから、そこで作法を教えてあげるんです。畳に座らせてお茶をだしてあげたり、軸を掛けたり、また正月には着物を着せてお膳を出してあげたりしましてね。北側の坪庭が座敷に座った時の目の高さで、とてもきれいに見えるんですよ。隣家の塀が見えないように、開口部を低く押えているんですね。

(別冊新建築 日本現代建築家シリーズ7

 吉村順三 1983年刊・・・より)

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湘南茅ヶ崎の家の平面図。

下図が道路に面する1階平面図。

上図が2階平面図。

構造は1階がRC造で2階が木造。



湘南茅ヶ崎の家の竣工は1967年なので

築後49年経過しています。

(元)建主の寺田氏が書かれていたころとは

ずいぶん、周辺環境が変わり、

いろいろなものに遮られて、

現在では茅ヶ崎の海岸や

菊竹さんの設計された

「パシフィックホテル茅ヶ崎」を

見ることはできません。

(あの珍しいかたちをした

「パシフィックホテル茅ヶ崎」は

もうとっくの昔に壊されてしましましたが・・・)

しかしその反面、

見えなくなった良さのようなものが

新たに生まれてきているようにも思います。

庭の緑も生い茂って、

この場所で「完結」された

「気持ちいい場所」に・・・・。

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今回、湘南茅ヶ崎の家を見学できたのは、

7月のなかばのことでした。

住宅医スクールで知り合った

㈱ライフデザインラボラトリーの

稲垣裕行さんから見学のお誘いがあり

幸運にも見学の機会に恵まれました。

実は今回の見学は3回目です。

名作は何度見ても学ぶところあり。

しかも個人住宅は

めったに見学できる機会はありません・・・。

今回の見学は

2階の生活スペースと庭が中心でした。

(元)建主の寺田氏が書かれている1階の和室は

見学することはできませんでしたが、

この和室が本当に素晴らしい空間で、

またいつか記事にしてみようと思います

(過去に記事にしたことが

あるように思いますが・・・)。

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階段を回り込みながら入っていく2階の玄関。

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リビングに面する南の庭。

この庭が盛り土をしたところ・・・。

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リビングに面する南の庭を

おりてくると池があります。

人工の小さな滝があって池に流れ、

その流れた水はせせらぎに変わり、

藤棚の下まで流れていくとのこと・・・。

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リビングの障子。

通称「吉村障子」とよばれる障子。

今回も実測しましたが、

組子桟の見付巾は14㎜で、

ひと枡の大きさは420㎜×270㎜でした。

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障子を開放した現在のリビング。

湘南茅ヶ崎の家は

2008年に耐震改修など行われ、

別のご家族によって、

愛情たっぷりに住まわれています。

置かれている家具も

当時の家具や照明が使用されつづけ、

新しく購入された家具も

吉村順三のデザインのものが多数あるようです。

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ダイニングからリビングを見ます。

食卓のテーブルも

テーブル上の照明も当時のもの。

ところで

湘南茅ヶ崎の家の最大の特徴は、

天井にあり!・・と僕は思っています。

ダイニングの天井の高さは2280㎜で、

その天井がリビングまで延長され

(リビングの天井の高さは2520㎜)、

そのまま平坦に軒裏までつながっていきます。

この天井の水平線が

湘南の海岸線の景色を

切り取っていたはずです・・・。

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著名な家具もさりげなく置かれています。

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トイレの入り口。

壁と一体化してドアかどうかわかりません。

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中庭。

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中廊下。

幅木の形状など、

隅から隅まで考え抜かれた設計です。

当初の施工は竹中工務店です・・・。

竹中工務店による

原寸施工図集も見せていただきました。

すごい図面でした・・・。



世代や家族の境界を超えてまでも

住み継がれる家・・・

湘南茅ヶ崎の家・・・。

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by y-hikage | 2016-08-12 12:10 | 吉村順三ギャラリー | Comments(0)
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