奇跡の森・・・小網代の森に行きました。
その日は、やんだりふったりの雨だった。
そのやんだりふったりの
雨のせいだけではなかった。
この森に入ったとたん
三人は、すごい!
すごすぎる!
こんな森があったんだ!
なに? まじかよ!
なんだこの迫力は?
うそでしょ!
日本じゃないみたい!
うっそうとしているようで清らか。
天までとどくのではと思わせる
大木そして大木・・・。
あるとき
「三浦半島に生態系が保存されている
奇跡のような森があって、
いつか行ってみたい・・・」と
稲田堤の家の建主さんが言った。
その話を聞いた時は、ああそうなんだ・・・。
と思ったぐらいでなんとなく聞き流した。
ところが「奇跡のような森」という言葉が
ずっと心の中で反復され続けた。
そのうちに
その「奇跡のような森」が
新聞などで目につくようになり、
とても行ってみたいと思うようになった。
そしてついに自然が大好きな友達二人と
6月のはじめの日曜日に
その「奇跡のような森」に行った。
その森は「小網代の森」とよばれる。
小網代の森は三浦半島の先端にある
相模湾に面した森だ。
この森は関東・東海地方で「唯一」、
集水域の森林・河川・干潟が開発されずに
連続して残されている自然環境
と言われている。
森・川・海のつながりが必要な
アカテガ二をはじめとして2千種とも
言われる多くの生き物が棲んでいるという。
広さはおよそ70ヘクタール。
その面積は明治神宮の森と
ちょうど同じ広さで
およそ70ヘクタールあるとされる。
森には「浦の川」が上流から流れながら
細かな支流に分かれて
葉っぱの葉脈のように谷をつくっている。
小網代の森は、
この「浦の川流域」によって形成され、
この森にふった雨はすべて
浦の川に注いで小網代湾に流れ込む・・・。
この森は1970年ごろ
ゴルフ場やリゾートホテルや住宅の
開発計画がもちあがったという。
しかしこの貴重な自然を残そうと
神奈川県や地域住民やNPOが
三浦市と京急電鉄と話しあって
保全することになり、
いわば手つかずの森となった。
かつての浦の川沿いは
水田だったという。
山の斜面はクリやコナラやマツやシイが
はえた薪炭林で地元の人たちが
手入れしていたという。
ところがこの森を保全することになって
30年近く放置され「手つかずの自然」となり、
小網代の森の「自然の多様性」が
どんどん失われた。
小網代の森のような近郊の小さな森は、
人間がこまめに手入れをしないと
多くの生きものが暮らす環境を
維持できないという。
「NPO法人小網代野外活動調整会議」が
中心となってササや雑草を刈ったり、
適度に木を伐採したり、
川筋をかえて湿地帯を豊かにしたりした。
この作業を彼らは
「水と光のマネジメント」と呼んでいる。
木を切ると川に光が入って、
川底の石に珪藻が生え、
藻がはえるとカワニナという貝が増え、
カワニナがホタルの幼虫の餌になり・・・・。
と生態系の循環がはじまる・・・。
水と光で生育環境をコントロールすれば
生きものは復活する。
どこかから持ってくる必要はない。
しかし、そんな方法がとれるのは
小網代の森の流域全体が
守られている自然だからだ。
「 流域単位の自然 」だから
はじめてできることだ。
僕たちは、上流から下に向かって
歩いていくうちに、
少しずつ風景が変化していくことに
気がつきはじめた。
えっ?
なんで?
なんか風景が変わってきていない?
なんでだろうね?
そう・・・。
上流から下流にむかって
植生が確実に変化していくのだ。
そのみごとな変化のしかたに
僕たちは歓声の声をあげた。
すごすぎる・・・。
まるで音楽のようだ・・・。
遊歩道の勾配がほぼ平坦になってきた。
視界も少しずつ開けてきたようだ。
海抜1.5mという看板を見つけた。
えっ? 「 1.5 ? 」
「 ほぼ 0 m じゃない! 」
「 もしや 海に近いってこと ? 」
すごい!なんだこの木は???
すごいね!
なんだろうね・・・この木は・・。
木がつるに絡まれて
窒息しそうになっている。
「 すごい生命力だね !」
この森ってドクダミみたいな花が
いっぱい咲いているよね。
なんの花だろうね・・。
まわりがヨシみたいになってきた。
ほんとだ。
まわりがヨシみたいになってきた。
ほんとにこれヨシかなあ・・・。
そして突然、干潟にたどりつく。
三人はしばらく干潟をぼうぜんと見つめる。
ついに干潟についたね・・・。
なにやら下で小さな何かが
動いていることに気がつく・・・。
「 カニ だよ! 」
一同、じぃ・・・と その動きを見つめる。
「 すごい数だよ! 」
「 すごい数だ! 」
「 しかも踊っている! 」
「 最低でも百匹はいる! 」
「 みんな同時に踊っている! 」
「 すごすぎる! 」
僕らは30分ぐらい、
カニのダンスを見ていた。
一人は一時間でも二時間でも
見ていられると言った。
干潟のそばに、
「 カニダンス 」の説明看板があった。
この小指の爪ほどの小さなカニは、
「 チゴカニ 」というらしい。
小網代の森は上流から干潟までの
高低差はおよそ80mだ。
浦の川に沿ってくだりながら
徐々に植生が変わっていく。
その断面図を書いてみた。
平面的な距離はおよそ1.3㎞。
奇跡の森・・・「小網代の森」 。
雨がふったりやんだりだった。
でもそれが逆によかった。
三人は、帰りの道、ずっとずっと
来てよかった。
来てよかった。
と言い続けながら歩いていた・・・。
僕は、小網代の森が
バリ島の森ににていると思った。
小網代の森で
バリ島を思い出していた・・・。
(余談ですが・・・
この日影アトリエのロゴマークは、
山と湾がつながれているイメージを
図案化したものです・・・)
by y-hikage
| 2016-06-10 16:13
| 森の中と町の中で
|
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