「北鎌倉の家」は二つの和室を移築復元するとともに移築する家の建具をほぼ全て再利用する設計である。よって基本設計の段階から移築前の家を詳細に実測し再生する空間の設計をしている。玄関の引き分けの格子戸と欄間は古建具。化粧軒裏天井と網代の天井は当然のことではあるが無垢の杉を使用している。
1階の居間食堂の古建具。おおざっぱに古建具を使用することはありえない。古い部材があたかも自然に、そして以前からこの場所に存在していたかのようにするため解体前に空間の粒子を読み取っておく必要がある。
2階個室の古建具。
神は細部に宿る。階段部の通し柱のホゾとコミセン
仕上がってしまうと何事もなかったように棟梁の仕事が隠れ潜む。ハバキの納まり。
廊下のサオブチ天井。サオはイスカ継ぎで継ぐ。
窓の敷居。水切りのために立て枠に銅板の立ち上げる。何気なくきれいに仕上がっているがその奥に道具が見える。
格子の妻板の納まり。抜かれたホゾの面の加工。10年以上前に数奇屋建築の実測をしていた(土居邸実測)。僕は柱のチリや面の寸法をひたすら実測していた。その時訪ねてきた二まわりぐらい年上の建築家が「そんな細かいところを実測しても意味がない。もっと空間全体を読みなさい」と言った。はたしてそうなのだろうか。と僕は疑問に思った。建築は大きな空間構想と綿密な細部のイメージが必要なのではないのだろうかと。